キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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財閥令嬢誘拐事件


巻き込まれ体質


小正月を過ぎた頃。
さすがに休み過ぎたとキッドとしての活動を少しずつ増やしている。
何より、パンドラがその力を発揮するボレー彗星最接近まであと1年。
この1年が勝負だ。
今までに増して、組織の妨害に合うだろう。
下手をしたら、親父のように消されるかもしれない。
だがあの日、この事に関して決して感づかれず、今まで通り側にいると決めたからには必ず生きてケリをつける。
改めてそう誓った。


「さ、て、とー?俺のお姫様は今どこでしょーねー」


以前の下見でばったりあおいちゃんに出会してしまった俺は、本人に黙ってGPSを入れさせてもらった。
俺の変装を1番見破る可能性があり(それもなんとなくそう思うとかいう全く根拠のない理由で見破りそう)かつ、1番巻き込まれちまいそうな一般人だからだ。
決して彼女の行動を見張ろうとかそう言った理由ではない。………たぶん。


「…ん?あれっ?」


キッドとして動く前に、セーフハウスであおいちゃんの動向を確認してからにしようとGPSで捜索をした。
今日は園子ちゃんと米花デパートで買い物って言っていた。
…でもどー見てもGPSは米花町から離れていて。
どー考えても米花町を通らない沿線を、恐らく車か何か乗り物に乗っている速度で移動していた。
……………は?


「…出ねぇな…」


思わず電話をかけちまったが、あおいちゃんが出ることなく。
後はもう条件反射。
3台あるパソコンをフルに使って、あおいちゃんのGPSが指し示すあたりの防犯カメラをハッキングして動向を確認した。


「…あの車、か?」


あおいちゃんが乗ってるらしい車は簡単に見つけることが出来たものの、外からじゃスモークガラスで中の様子が見えないようにされていた。
…あからさまに怪しいじゃねーか。
これもしかして事件性あったりする?
そう思った俺は、園子ちゃんのケータイをハッキング。


「金を用意すれば、娘は無傷で帰してやる」
「ビンゴ!」


ハッキング数分後、園子ちゃんのケータイから鈴木財閥会長・鈴木史朗氏に電話をかけていた。
つまり園子ちゃん目当ての誘拐現場にたまたま居合わせちまった、ってところだ。
そして犯人は、娘「は」無傷で帰してやると言った。
それはつまり、娘以外は無傷で帰さない、と言ってるようなもので。


「誘拐犯風情がおもしれーこと言うな」


俺の中のスイッチが入った瞬間だった。


「ジイちゃん、悪ぃ!手貸してくれ!」


1人じゃ間に合わなくなるかもしれないと思った俺はジイちゃんに対象の車を監視してもらい、その誘導の元あおいちゃんが乗っている車にバイクで近づいた。
途中、園子ちゃんだけ下ろし、あおいちゃんを乗せしばらく走らせた後で、2人の男がぐったりとしているあおいちゃんを抱えて廃ビルに入っていった。


「快斗ぼっちゃま」
「どうした?」
「鈴木園子さんが警察の方に救出されたようです」


ジイちゃんは親父の付き人だっただけある。
1を言うと10とか下手したら100くらいまで俺の力になってくれる。
今回も頼んだわけじゃねーけど、園子ちゃんの続報をくれた。
園子ちゃんは園子ちゃんで助かったとなれば、とりあえず一安心だ。
これで心置きなくあおいちゃんを助けにいける。
5階建ての廃ビルの最上階、ボロいソファのある部屋にあおいちゃんは寝かされていた。


「おい!俺が先だろ!?」
「どっちでもいいじゃねーか」
「よくねーよ!!」
「しっかし最近の女子高生はエロい身体してるよな」


男が下卑た笑いを浮かべてあおいちゃんを見た。
ところでキレて飛び出そうとした時、


「うっ、げぇっ…」


意識を失っているはずのあおいちゃんが近くにいた男の1人を目がけてゲロった。


「汚ぇっ!この女寝ゲロしやがった!!」
「うげー…めんどくせー…薬の量間違えたか?」
「くっせーなぁ…!この臭いで勃ちもしねー。おい、どーするよこの女!」
「もったいねーけど、そこから落としゃあ死ぬだろ」


俺もヤりたくねーわ、ともう1人の男が言う。


「死ぬのはオメーらだよっ」
「は?えっ!?だっ、誰だお前っ、うわぁぁ!?」
「ま、待ってくれ!金ならもうすぐ大金がっ」
「入るわけねーだろ。オメーらのお仲間はとっくに捕まってんだ。オメーも後を追え!」
「うわぁぁ!?」


格闘経験なんてねーけど、こちとら伊達に警察や組織と遣り合ってるわけじゃねーんだ。
こんな杜撰な誘拐事件を計画するような行き当たりばったりな奴らにヤラれるような人間じゃないんでね。
男2人をロープで縛った(気が済まなかったからわりと思いっきりボコッた)
あおいちゃんに近づくと青い顔して未だ意識がない状態だったが、無傷で息をしていた。
そのことに心底ホッとした。
しばらく待っても目を覚ます気配もねーし、そもそも今の俺が目覚ました時にここにいるのもおかしいしな…。
ここからじゃ少し低いが、飛べなくもねーし、交番近くに届けるか。
そう思って、ここでようやくキッドの姿になった。
…でも、この子抱えて飛んでるとこ見られたらちょっとしたスクープだよな。
まぁ仕方ねーか。
それにしても、ニューヨークの時といい、事件に巻き込まれやすい体質じゃね?
そもそもにしてあの犯人、あそこであおいちゃんが吐かなかったら絶対ぇ好き勝手ヤッてただろ。
誰の女だと思ってんだよ。
気安く触んじゃねーって話しで。
あ、思い出したらすっげーイライラしてきた。
その後目が覚めたあおいちゃんに状況を伝え、


「いきなり薬品を嗅がされて逃げようがなかったのはわかりますが、」


もう少し警戒するように促そうとした。


「べ、つに、なにも嗅がされてない、です、よ?そ、そもそも私、園子とカフェ寄ろうって歩いてて、あ!お兄さんにお店教えてって言われて教えたお礼に紙パックのジュースもらったからそれ飲んでいったーい!!」


あおいちゃんの説明を聞いてたら、


「知らない奴から貰ったものを安易に口にするんじゃねーよっ!」


キッドとしてはらしくないほど怒鳴り声をあげていた。


「で、でも未開封だったし、」
「紙パックならいくらでも注射針刺して薬入れれるだろ!?少しは考えろっ!!」


そう言った俺にあおいちゃんは口をへの字にしてわかりやすくむくれた。
…俺だってそれくらいわかりやすくキレたいけど、そうしないだけ褒めてもらいてーよ。


「ここを真っ直ぐ行けば交番があります。そこの警官に事情を説明すれば保護される。そうなれば園子嬢が迎えに来てくれますよ」


俺が交番まで行くわけにはいかねーし、交番付近であおいちゃんを下ろした。


「あ、あのっ!怪盗さん!」
「何です?」
「た、助けてくれて、ありがとう、ございました」


悪いと思っているのかいないのか。
謝罪はされたがこれは微妙なところだ。


「いいですか、あおい嬢。これは貸しです」
「か、貸し?」
「はい。いつか返して頂きますから、心してください」


そう言って、あおいちゃんの前から姿を消した。
この後あの子が俺に何と言ってくるのか…。
とりあえず今はもう1度あの廃ビル近くに向かい、バイクを回収して帰路につくとする。

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bkm

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