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「じゃあ帰るか。そうだ、足痛いんだろ? 家までおんぶしてやるよ!」
快斗のその言葉に、一瞬我が耳を疑ったのは言うまでもない。
「いっ、いや! 大丈夫! そんなに痛くないから!!」
それよりも、高校生にもなっておんぶされるなんて、そんな恥ずかしい事されたくないし、快斗にもさせたくはないわよ。
しかし快斗は笑顔を絶やさないまま、全く怯んだ様子を見せずに言葉を続けてきた。
「遠慮するなって。無理して悪化させたらどうするんだ? ……じゃあ、おんぶが嫌ならお姫様だっこにするか?」
出来れば聴かなかった事にしたかったが、それは快斗の視線が許してはくれなかった。
「いや、ちょっと待ってよ快斗。何で捻挫ごときでお姫様だっこ……」
「歩くのつらいんだろ? だからおんぶかお姫様だっこのどちらか選べって」
私の身を案じてくれているのは分かる。それはすごく感謝している。けれども、その究極の二択を迫られ、どうして一人で歩いて帰ると言う選択肢を除外してしまったのか悔やまれる。
「……じゃあ、おんぶでお願いします……」
「ああ! じゃあ乗れよ!」
意気揚々と私に背を向けしゃがみ込む快斗の背中に視線を向けつつ、恥ずかしさを必死で堪えながら快斗の背中に身を預けた。
2013.01.01
bkm