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「もういいよ!新一のバカ!!」
『ちょっ…おい待っ…』
電話の向こうで新一がまだ何か言ってたけど知らない!
その日はそのまま携帯の電源を切った
「も〜…名前ったら何度も電話したのに全然つながらないんだから!」
朝
いつものように蘭とコナンくんと登校する
何か用事があったらしい蘭に電話がつながらなかったと怒られてしまった
「ごめんね、ちょっと…ムカつく事があって…」
言いながら
思い出してもムカついてくる
そんな私の顔を覗き込んだ蘭がにや〜と笑う
…ちょっと…その顔園子みたいだよ蘭……
なんて心の中で突っ込んだ
「…新一〜?もう、いつもいつもよくそんなに喧嘩することがあるわよね〜!今度は何よ?」
「……………」
むー……っとして俯いた視線の先にはコナンくん
その身長差から当たり前に視界に入って自然と目が合った
『…名前ねーちゃん?あのさ…新一にーちゃんも電話つながんねぇって心配してたよ?』
「……新一…小学生に愚痴ってるの…?」
私がそう言うと
何故か慌てるコナンくん
『えっと!えっと!…そう!!昨日ちょっと新一にーちゃんに用があって電話した時に名前ねーちゃんの話になって!』
「あら?コナンくん昨日電話なんてしてた?」
横から蘭がいつの間に?なんて疑問を投げ掛けると
更に慌てて言葉を続けた
『ら、蘭ねーちゃんがお風呂に入ってるときだよ!!』
「ふーん……」
納得したのかしないのかよくわからない反応をする蘭から私に視線を戻したコナンくんが困ったような目で見上げてきた……
『……名前ねーちゃん…?』
「私……もうやめるから…」
「『……え?』」
私の言葉に蘭とコナンくんの声が重なる
「もう…こんなの耐えられない…連絡とるのも新一からばかりで、私から連絡してもほとんど出ないし……会いたいって言ってもいつも事件事件って……もうどれくらい顔も見てないと思うの?!…何かある時だけ連絡してきて………私は……私は便利な女じゃないもん!!」
「名前?!ちょっと落ち着いて!?」
『名前ねーちゃん!?』
泣きながら叫んだ私に
慌てる蘭とコナンくん
「新一は探偵だから……事件があれば行っちゃうのも仕方ないと思ってるけど…どうしても!…今度の休みには会って欲しかったのに……無理だって。どうしてもダメだって……」
『その日に…何かあるの…?』
私の切羽つまった感じに真剣な顔で見上げてくるコナンくん
「そうよ…その日じゃなきゃならない何かがあるの?」
心配そうな蘭の顔
「……他校の…男の子に……実はずっと好きだって、付き合ってって言われてて…」
『はぁっ?!…っと、なんでもない!それで?』
続きを促すコナンくんの顔が引きつってるような気がしたけど
蘭にも急かされて再び口を開く
「付き合ってる人がいるからって…何度も言ってるんだけど…関係ないって…デートとかしてるの見たことないし、淋しい思いさせたままほっとくようなヤツより俺のがいいってとか……それでも断ってたんだけど、だったら…会わせてって…会って、私がちゃんと大切にされてるってわかったら諦める…って……」
「……すごい積極的というか……」
そう……
彼
黒羽快斗くんは人懐こい笑顔を向けながらグイグイくる
最初は冗談だと思ってた
新一への愚痴も真剣に聞いてくれて
いつも元気づけてくれてたから
それが
いつからか
本気で迫ってくるようになって
快斗くんは大事な友達だし
好意を向けられるのは素直に嬉しい
私も
恋のそれとは違っても
快斗くんは好きだ
でも……
快斗くんはホントに新一に似ていて…
姿だけじゃなくて声も
ふとした時の雰囲気も
違うとわかっていても
彼に失礼だとわかっていても
新一を重ねてしまう
…ねぇ新一…?
このままほっとかれたら私…いつか新一の変わりとかそんなんじゃなく
ホントに快斗くんを好きになっちゃうかもしれないよ……?
→
bkm