Treasure


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キミがいるから


1



【高校生探偵・工藤新一!またまた難事件を解決!】





「……はぁ……」





新聞の見出しを見つめながら無意識に出るのはため息




「…学校行こ…」





もう一度大きくため息を吐いて
カサカサと新聞を畳んで椅子から立ち上がった























「名前!おはよー!」





玄関を出ると
外には既に蘭と新一が待っていた





「おはよう蘭。…新一も…おはよ?」





蘭の隣でリフティングをしている新一を覗き込むように見上げると





「おぅ!はよ!」




満面の笑みで返されて
さっき感じたモヤモヤなんか一気に吹っ飛んでしまった





3人でおしゃべりしながら学校に向かう途中

ヒソヒソと話す声が耳に付く





2人と話しながらチラリと目を向ければ
新一の話をしているのだと気付く





"ホラ、朝の新聞で……"

"ニュースでも言ってたよ"




あぁ…やっぱり……


「……はぁ……」





新一が探偵として活躍するのは私も嬉しい




でも


活躍すればするほど
新一が騒がれるということで…





気付かれないようにそっと隣を歩く新一を見上げる





…うん…カッコいいもん…仕方ない…





凛とした横顔

前を向く瞳は迷いがなくて


こんな人がどうして私を選んだのか





「ふぅ……」




新一から視線をずらして小さくため息を吐いた





「名前?どうかしたのか?」





横を歩く新一に覗き込まれて慌てて顔をそらしてしまった





「…おい……何顔そらしてんだ?」


「なっ何でもない!」


「何でもなくねーだろーが」




少し不機嫌になった新一が更に近づこうと私に向かって一歩踏み出した時





「あのっ…高校生探偵の工藤新一くん…ですよね!?」




不意に前から来た数人の女の子グループに声をかけられた








「ったく…ちょっとチヤホヤされるからってあんなにデレデレしちゃって……名前!あんなバカほっといて先に行きましょ!」





そう言って私の手を取って歩きだした蘭に引かれるまま新一を気にしながらも歩きだした


…あんなの…見たくないもんね……





「ちょ!おい待てって!」





すぐに気付いた新一が女の子達を振り払って追いかけて来た





「待てっつーの!」





ぐいっと肩を掴まれた私は

とっさに
「やっ……」




新一の手を





振りほどいてしまった






「ぁ………」





「……んだよ……何急に機嫌悪くなってんだよ。意味わかんねぇ」





急にじゃないもん…

新一の言葉に
今まで少しずつ溜まってきていたドス黒い感情が頭をもたげる





「ちょっ…新一そんな言い方!」





「急にじゃないもん…」





「は?」





「…新一が探偵として活躍するのは嬉しいと思ってる…けど……」





「…けど…何だよ?」





「……………」





「……おい…何だよ言えよ」




黙る私をイラつきながら急かす新一





「……いやなんだもん…」





「…は?何がだよ?」





こんなこと
ホントは言いたくない


ただの私のワガママ…





こんなこと言ったら
新一に呆れて嫌われちゃうかもしれないのに…





「新聞とか…テレビとか……新一が取り上げられるたびに…私とは住む世界が違うんだって……私なんかの手の届かないところに行っちゃうような気がして……寂しいよ…」





堪えきれなかった涙が頬を伝う


泣きたくなんかなかったのに……






「バーロォ……俺が名前から離れるわけねぇだろ」





怒鳴られるかもしれないと覚悟していた私の耳に

信じられないくらい優しい声が届いて
ゆっくりと顔を上げると
優しく笑う新一と視線が絡んだ





「俺は……名前がいるから……頑張れるんだ…ぜ?」





サラリと私の髪に指を絡ませてそのまま頭を引かれて

ポスン…と抱き寄せられた




「っ/////…しっ……新い……」





「…ったく……んなくっだらねぇこと考えてんじゃねぇっての!」





「……ごめん…なさい…」




そう言って
新一の背中に腕を回……そうとした時……





「…ねぇ?私の存在、忘れてない?……しかもココ、道のド真ん中なんだけど…」




あきれ顔の蘭によって我に返った





「…っあー……俺は承知の上だけど?」





ポリポリと頬をかきながらニヤリと笑う新一





私は
カーーッと顔に熱が集まるのを感じて





「ぎゃぁぁぁ!!////わぁぁぁ///信じらんないー!!!!」





「ぉわっ?!ちょっ名前っ待てって!」





顔から火が出そうなくらいの勢いで叫ぶと私は一目散に走りだした





後ろで蘭と新一の私を呼ぶ声が聞こえたけど
私はかまわず走った





……運動神経の差で私が掴まるのは数秒後…











fin
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bkm

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