ごみ箱 | ナノ

01
 
気がついたら赤ん坊になっていました、とか笑えない。

前日はいつも通りに布団に入って眠りについたはずなのに、気がつけば産声をあげている赤ん坊になっていた。名前はユカリと言うらしい。ちなみに日本人ではなかった。英語なんてわかんねーよ。

始めはなんの冗談だよ夢だよね、と思っていたけど、3、4日経っても元には戻れず、これが現実なのだと気がついた。だけれどもそう簡単にそんなことを受け入れられるなんてことできなくて。
本来なら優しい父と母だったのだと思う。でも、私の赤ん坊とは思えない奇妙な行動に、彼等は私を怖がるようになった。友達なんて作れるはずもなく、ずっと1人だった。

最初はそれでもよかった。だって私はいつかは帰ることができるはずだって信じてたし、この世界にいる人達と馴れ合ってしまえば、もう本当に帰れなくなってしまうような気がしたから。
だけど、何年もこの世界で過ごして、ああ、もうこの世界で生きて行くしかないんだ、って悟ってしまった後、私に残されたのは孤独感だった。1人は、寂しい。

幸い、学校では私は避けられこそしたが、虐められることはなかった。でも年が経つにつれ、楽しそうにお喋りをしている女の子達を見るたび、少しだけ、その輪に入りたいと思ってしまっていた。

でも、もう手遅れだった。
ユカリ・グリーンはおかしい。アイツには近寄るな。呪いをかけられるぞ!
そんな噂は街中に広まっていて、私と友達になってくれる人なんていなかった。

もう誰もいないどこかへ消えてしまいたい。
そう思った時だった。あの“手紙”が家に届いたのは。



*****




紋章入りの紫色の蝋で封印してあるその封筒の中身を見た時、自分でも驚くくらい、冷静だった。
魔法魔術学校、ホグワーツからの手紙。これが私に届いたってことは、ここはハリー・ポッターの世界。そして私は、魔女。
確かに、私は今まで幾度か、現代ではありえないような出来事を経験していた。例えば、お皿が割れてしまうほど高い場所から落としてしまっても、傷1つつかなかったり、カッターで指を切ってしまったと思ったら、数分でその傷はなくなってしまっていたり。
そしてこれらは、私がみんなから避けられている1つの原因でもあった。

父と母は魔法などどうでも良いらしく、私が全寮制の学校に入ることに喜んでいた。私も、これから始まるであろう素晴らしい日々に胸を踊らせた。



2013/03/20

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