02
コードギアス。
私はこの物語の結末を知っている。勿論、事細かに覚えているわけではないけど、幼い時に何かあった時のためにと手帳に覚えている限りのことを書いておいたため、大まかなことはわかる。そしてその手帳には暗号代わりに日本語で書いてある。
私は、どうするのか決めていない。無理矢理、原作に介入してどうにかしてあの悲劇を止めるべきなのか。
けど、ゼロレクイエムがあったからこそあの世界は一応平和になったのであり、私がそれを止めてしまった場合、事態は悪い方向に向かう可能性だってある。だけど、ルルーシュを死なせたくない。ルルーシュだけじゃなく、ユーフェミア様も、シャーリーも、ロロも、みんな、みんな。
だけどそう悩んでいるうちにマリアンヌ様はお亡くなりになり、日本はエリア11へと姿を変えた。この時私は10歳。偶然なのか運命なのか、私は彼等と同い年だった。
そしてそれは私が12歳の時のある日の出来事だった。
私の家はよくわからないけれど所謂貴族というやつで、皇族に嫁いだ親戚が何人もいるくらいだった。私はその家の一人っ子で、優しい母と父、それから使用人とで暮らしていた。幸せな家庭だった。
「ユカリ、今すぐ荷物をまとめろ! 本当に大切な物と必要な物だけ持っていけ。もうこの家には戻らない」
真夜中。
焦ったように言う父に、これが只事ではないことを悟った。慌ただしく家の中を駆ける父と母。私は急いで荷物をまとめて家の外へと出た。
父の運転する車に乗って私と母が後部座席に座る。
「お母さん、これからどこに行くの……?」
そう聞いても母は悲しそうに首を振るだけだった。
*****
車で着いた先は空港だった。
もうすぐ夜は明けるようでで、うっすらと光が差し込んでいた。お父さんは空港のロビーで座っていた、帽子を深く被った男の人に近づく。
「グリーン、来たか」
その男の人はお父さんが近づいたのがわかると、立ち上がって声をかけた。見た目からして、多分年はお父さんと同じくらい。私達と同じく大きなバッグを手にしていた。
「その子が、か」
「ああ、よろしく頼む」
視線が私へと向けられ、私はギュッとお母さんの手を強く握る。お母さんはそんな私の頭を優しく撫でた。
「ユカリ、よく聞きなさい。お父さん達はワケあって当分ユカリと一緒にはいられなくなった。だからユカリは暫くは、この人ー‥ブラッドと暮らすことになる。いいか、ブラッドの言うことをよく聞いて、良い子にしているんだぞ」
そう言ってお父さんは私の手を引いてぐいっと、その人ー‥ブラッド、さんの前に出す。ブラッドさんは表情の読めない蒼い目で私をジッと見つめていた。
「お母さん達は会えなくてもいつでもユカリのことを想って、愛しているからね。いつか必ず、迎えに行くからね」
お母さんは今にも泣き出しそうな表情をしていて、ギュッと私を抱きしめた。
「そうだ、ユカリ。これを持っていろ」
そう言ってお父さんが私に渡したのは、美しい月をモチーフとしたペンダントだった。私はわけがわからずお父さんを見つめる。
「これはユカリが俺達の娘であるという証だ。いいか、肌身離さず持っていろ。そして、誰にも見せるな」
私がコクン、と頷けば、お父さんは「いい子だ」と言って私の頭を撫でた。
「そろそろ時間だ」
ブラッドさんが時計を見てそう言えば、お父さん達は頷いた。ブラッドさんは「行くぞ」と私に声をかけ、お父さん達に背を向ける。私もお父さん達に「また、会えるよね?」と、問いかけて、答えを待たずにブラッドさんを追いかけた。
暫く歩いて振り返っても、お父さんとお母さんはまだそこにいて、私に優しく微笑んでくれた。
「お父さん、お母さん、今までありがとう。大好きだよ」
2012/12/02
前へ 次へ
戻る