ごみ箱 | ナノ

01
 
気づけば赤ん坊になっていた。つまりは転生をしたんだ、ということを暫くして理解した。
最初は何がなんだかわからなくて、元に戻りたくて仕方がなくて。母親を、父親を、祖母を、祖父を、全てを拒絶した。


そして私が生まれてから三年後、私に妹が生まれた。アイカ、という名の子だった。
妹が生まれた、ということは母親と父親には私とは違う子供ができた、ということ。つまりは私はいらなくなった、ということ。

「この家に住ませてあげているんだから感謝しなさい」
「おまえは邪魔だ、俺達の子じゃない」

こうなったのは全て、拒絶をした私のせい。自業自得。でも、構わなかった。
だって、私の本当の親はあなた達じゃない。あなた達が親だなんて、私は認めない。私の親は、私を優しく育ててくれたあの人達だけ。

「サヤカ」

皆が私をそう呼ぶ。
サヤカ? だぁれ、それ。そんなの、私の名前じゃない。私の名前は紫。萩原紫だよ。

「おまえなんて、生まれてこなければよかったのに」
「いっそのこと、捨ててしまう?」
「いや、それはまずいだろう。アイツの存在はもう世間に知られている。捨ててしまえば、俺達の立場が……!」

気味が悪かったのだろう。
幼いくせに、流暢に喋れ、子供らしかぬ言動をし、子供らしかぬ行動をする私が。
腹が立ったのだろう。
言うことをきかず、全てを否定し拒絶する私が。


私は、軟禁、に近い生活を余儀なくされた。
虐待をされなかっただけまだマシだがが、私はいつだって1人だった。
私の世話は使用人に任せ、私の産んだと言う女と男は私を見ようとも会話しようとも会おうともしない。もう、ずっとあの2人には会っていないし、この屋敷からもずっと出ていない。
私は毎日を一人で、広い部屋で何もすることもせず、過ごしていた。

もう、どうだってよかった。かと言って、自殺をする勇気なんて私には持ち合わせておらず、ただただ自由になる時を待っていた。



2012/06/02

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