my sister | ナノ


ピーンポーン、と家のインターホンが鳴った。その音に私はピクリ、と肩を震わした。はぁーい、なんて言う姉の嬉しそうな声。私は急いでそれまで見ていたテレビのお笑い番組を消し、リビングから自分の部屋へと戻って、鍵を閉めた。

暫くすれば、騒がしくなる我が家。姉の友達が、家に来たのだ。
耳をよく澄ませば母の「よく来たわねぇ」なんていう穏やかな声や、姉の「さあ、入って入って!」なんていう朗らかな声が聞こえてくる。姉の連れて来た友達というのは今日もまた同じ部活の仲間、つまり男子だけらしく、より一層騒がしい。別に姉に女友達がいないとかいうわけではなく、その男子達が姉の家に行きたいといって聞かないらしい。

今日、彼等が遊びに来るのは元々わかっていたこと。それなのに、気分が重い。

最初に彼等がこの家に訪れた時、彼等も姉の妹ということで、多少私に興味を持ったがすぐに別の物へと興味は移り、もはや接点は無い。あっても学校や街で偶然会った時に会釈をする程度だ。

アハハハハ、なんていう笑い声が姉の部屋のほうから聞こえてきた。今日来たのは声からすると4人だろう。ゲームでもやっているのだろうか。
母はきっと今頃、姉とその友達に出すためのおやつでも用意しているのだろう。彼等にそれを出したらきっと母は私の部屋に来て、芽衣にも、って言っていつもとは違う少し豪華なおやつとジュースでも持ってくるのだろう。


いつもと変わらない、そんな休日のある日。



*****




あれから三日。桜が舞うこの日。私は今日、高校1年生になる。通う学校は立海大附属。氷帝学園に通っている姉とは、私が中学まで通っていた氷帝とは、別の学校だ。
何故違う学校なのかと問われれば、それは単に姉と同じ学校なのが嫌だからである。

私と姉は恐ろしく似ていない。本当に姉妹なのか疑ってしまうほどに。それは単に私が父に似ていて、姉が母に似ているというだけのことなのだが、事あるごとに、「本当に姉妹?」なんて聞かれてきた。
私と血が繋がっているのは本当のことだし、事あるごとに比べられるのが嫌だった。親戚にでさえ「似ていないねぇ」なんて言われるのは嫌なのに、赤の他人に言われるのはもっと嫌だった。
私と姉が似ていない。そんなの、私が一番よく分かってる。

そこらへんは両親も私が何も言わなくても察してくれたようで、立海に行く、と言えば黙ってお金を出してくれた。
立海に行く理由としては、知り合いが一人もいないし、偏差値もそこまで悪くない。ただ、それだけ。

でもやはり小等部から氷帝に通っていた私は今までいた友達ともなかなか会えなくなるし、中高大一貫校の立海にいきなり高校から編入、というのも不安があり、メリットもデメリットもある。
それでもやはり姉と一緒の高校にいたくないという思いのほうが強くて立海に行くことにした。

私は高鳴る胸を抑えながら、入学式をするその学校の校門をくぐった。


2011/05/23(修正2012/10/08)
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