my sister | ナノ


合宿が終わった後も、何事もなく毎日が過ぎて行った。そしてもうすぐ夏休みとなる。だけど、私と姉の関係が改善されることはなく、家でのそんな私達の様子に事情を知らない母は、ただ困ったように笑うことしかできなかった。
あともう1つ。


「遠藤、お前の姉さん立海に来ないのかよ?」


丸井先輩はすっかり姉のことを気に入ってしまったらしく、さらに言えば私と姉の関係がギクシャクしてしまっているのに気づいていないようで、事あるごとに姉と会わせろと言ってくる。それに少しだけ、落胆した。また同じなのか、と。
でもまあ、ある程度覚悟はしていたことだ。そう言ってくるのが丸井先輩だけだったということが救いだろう。


「しばらく立海に来る用はないみたいですけど」

「マジかよ。遠藤、夏休み中にはなんとかしてお前の姉、立海に連れて来いよな!」

「……努力はします」


私がそう答えると、丸井先輩は上機嫌で私の前から消えて行った。
とは言ったものの、姉を立海に連れて来る気はさらさらない。と、言うかムリだ。
もう家で私と姉が会話は全然ないし、姉は氷帝のマネージャーとして毎日忙しい。少ないオフの日だってきっと友達と遊びに行くのだろう。まあ私は部活がある日以外には予定もなく、家にいるから顔を合わせなくてすむから好都合なのかもしれないけど。


「まーた暗い顔しとるのう」

「……仁王先輩」


丸井先輩が去ってすぐ、背後からした声に振り向けば、仁王先輩が立っていた。


「ブンちゃんは面食いじゃからな」

「聞いていたんですか」

「ちょびっとだけ」


私はハァ、と溜息をつく。


「なんか、利用されているだけな気がしてなからいんですよね」


ポツリ、と独り言のように、そう呟いた。


「利用してるだけじゃなかよ」

「え?」


思いもよらない返事が帰ってきて、私は驚いて仁王先輩の顔を見た。
仁王先輩は相変わらず感情の読めない目でジッと私を見ていた。


「確かに、ブンちゃんは遠藤を利用しとるけど、それでいて、遠藤と友好的な関係を築こうとしてるじゃろ。違うか?」



2013/03/25
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