my sister | ナノ



「え、うそ……」


数日後、私の元へと届けられた一枚の紙を見て、私は思わずそう呟いた。


「え、芽衣ちゃん、男子テニス部マネージャーになれるの!?」


不信に思ったクラスメートが私が手に持つ紙を見て、さけんだ。途端、クラス中の視線が私の元へと集まった。私は居心地が悪くて、視線を床へ向ける。
そう、それは何を隠そう男子テニス部マネージャーの入部届けだった。


「えぇ!? うっそぉ。芽衣ちゃん、おめでとー!」

「いいなぁ、芽衣ちゃん。羨ましい」


私と一緒に仮入部に行っていたけど、マネージャーになれなかった人たちも、私を祝ってくれた。
だけど、それとは裏腹に、私は浮かない気分だった。

元々、男子テニス部マネージャーなんてやりたくともなんともないのだ。だけど、もはや引き下がるに下がれない雰囲気が出来上がってしまっている。ここで断ってしまうのはなりたかった人に失礼だ。それにー‥もしかしたら、もしかしたら、マネージャーになってしまえば、私は変わることができるかもしれない。そんな思いが高まった。
だから、私は、


「がんばろう……」


小さくそう、呟いた。
姉は、母は、どんな表情をするだろうか。
喜んでくれるだろうか、はたまた落胆してしまうのではないだろうか。そんな不安と期待が胸を渦巻いた。
その時。


「ねぇ、アンタ。男子テニス部のマネージャーになるわけ?」


唐突に隣の席の切原くんに話しかけられて、私はビクッと肩を震わした。
クラスメートの一人が、「切原くんは、テニス部なんだよ」と、教えてくれた。


「あ、うん。これから、よろしくね」


そう言って切原くんに微笑めば、何故だかサッと目を逸らされた。その彼の表情は、いかにもつまらなさそうで。
それが少し悲しくて、嫌われているのだろうかと、怖くなった。



2011/06/22(修正2012/11/24)
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