プルル、と携帯電話が鳴って画面を見れば芥川慈郎の文字。
その文字を見て、メールではなくわざわざ電話だなんてどうしたんだろう、なんて思いつつも先輩からの電話が嬉しくて、自然と笑みが零れた。
「あ、芥川先輩?」
「芽衣ちゃん! 久しぶりだねー!! 立海はどう? 楽しい?」
「あ、はい」
「寂しくなたらいつでも氷帝に帰ってくるんだよー?」
久しぶりに聞く芥川先輩の声に、私は日々の疲れが癒されたように感じた。
芥川先輩は、優しかった。
皆が姉の虜になっても、芥川先輩だけは違っていた。芥川先輩だけは、私を“私”として見てくれた。
「ところで芽衣ちゃんさー、今度一緒にどこか遊びに行かないっ?」
「えっ」
「映画館でもいーし水族館でもいーしなんなら遊園地でもいいよー?」
無邪気にそう言う芥川先輩に、ドキ、と胸が高鳴った。
え、だってこれってデートってことだよね? 芥川先輩、わかってるのかな?
結局水族館に行く約束をしてしまい、私は呆然と携帯電話をボーッとしながら見つめた。や、やばい。
*****芥川慈郎side俺は切られた携帯電話をぼんやりと見つめる。
まだ胸が高鳴っていて、思わず携帯電話を落としそうになった。
俺は、芽衣ちゃんが好き。
皆は深衣、深衣って、深衣のことを気にするけど俺は断然芽衣ちゃんのことのほうが好き。いや、別に深衣のことが嫌いってわけじゃないけど。
だから、芽衣ちゃんが立海に行ったっていうことを聞いた時、すっごくショックだった。会える時間なんかも少なくなるし。
「はぁ……」
思わず溜息が零れた。
芽衣ちゃんはまだ、俺の気持ちをこれっぽっちも知らないだろうし、俺のことなんてなんとも思ってないんだろうなぁ。
俺が君に優しくするのは下心があるからだって知ったら、君はどうするんだろうね。
道化とても面白そうなネタだったのですが、ただの番外編だと連載に支障が出てしまうので勝手にifとして扱わせていただきました。
50000hit企画に参加、リクエストしてくださりありがとうございました!!2011/09/16
←