my sister | ナノ



「じゃあ、君たちはまず仮入部ね。仕事はあそこにいる柳とマネージャーの泉山に聞いて」


放課後、誘われた女の子達と一緒にテニスコートに行けば、ざっと30人ほどの女子達が集まっていた。勿論、全員マネージャー志望だ。
どんだけマネージャー人気なんだよ、と言いたくなった。

そんな私達に溜息をつく幸村部長を見て、私はようやく断ればよかった、と少し後悔した。そんなゲッソリとしたテニス部の先輩達と、それに気づかないでキャーキャー騒ぐマネージャー志望の女子達を見て、ああ、どこの学校も同じなんだなあ、と思った。

人数が多いので柳先輩は洗濯の仕方を、泉山先輩はドリンクの作り方を分担して教えるとのことだったが、みんなが柳先輩に教えてもらおう必死だった。なんでも柳先輩は中学の頃からのレギュラーで、頭も良くかっこ良いらしい。
私はそんな女子達と関わるのが嫌で、迷わず泉山先輩(2年女子の可愛い先輩)のほうへと着いて行こうとすれば、驚いたような表情をされた。……そんなにみんなテニス部の顔だとかそういうの狙いだったのか。真面目にマネージャーをしようと思って来た人はいないのか。


「ふふふっ、珍しいわね。レギュラー狙いじゃないなんて」


泉山先輩(泉山瞳(ひとみ)と言うらしい)はドリンクの粉を混ぜながら私に話しかけた。結局、人は半分ずつにわけられたが泉山先輩の方へ来た人達は皆お喋りばかりをしていて、まともにやっているのは私くらいだった。(ちなみに私が誰とも喋らずなかったのは、私には友達もいないし、今日初対面の相手に話しかける勇気もなかったからだ)


「見慣れているんですよ、顔が良い人なんて。それに、顔が良い人は同じく顔が良い人しか好きにならないし、興味も無いんだから、キャーキャー言うだけ無駄です」

「そんなことないわよ。……あなたは、自分に自信がないの?」

「まあ、はい。だって、私はお世辞にも可愛いだなんて言えませんし」

「そんなことないわ。あなたの顔はとても可愛らしいわよ」


泉山先輩はそう私にそう言ってくれたけど、きっとこの人も、私と姉を見比べてしまったら、そんなことも言えなくなるだろう。
そんなこと、わかってる。わかってるからこそ、溜息が出た。


「さ、このドリンクをみんなのところに持って行きましょう?」


泉山先輩が立ち上がったから、私も立ち上がる。
泉山先輩はドリンクを持ちながら私に言った。


「人間、顔だけが全てじゃないのよ」


そんなの、わかってますよ。
でも、あの人は全てにおいて完璧なんです。



2011/06/22(修正2012/11/24)
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