my sister | ナノ




「ねえ芽衣。私、何か悪いことした? あの子に、嫌われちゃったのかな?」


女の子が部屋から出て行った開口一番、姉は不安気な表情で私にそう聞いた。それに私は眉根をよせた。
姉は何を言っているのだろう。嫌われた、というよりもただ単にあの子の態度が悪かっただけじゃないか。そこまで考えて、私はああ、と思いつく。

姉は、人に嫌われたことも、素っ気ない態度をとられたことも、滅多にないんだ。
姉は誰からも好かれるような容姿と性格で、私が氷帝にいた頃も、姉がテニス部マネージャーだからという理不尽な理由で姉を嫌っていた人も、一度姉と話したら皆姉のことが大好きになった。姉が嫌われるなんてこと、なかった。
だから、姉にとってあの子の態度は異常で、不安なのだろう。でも、きっとあの子だって暫く姉と話せばすぐに姉のことが好きになる。

その時、コンコン、部屋のドアが叩かれた。


「深衣、一緒に広場に行こうぜー!」


開かれたドアの先にいたのは向日先輩と忍足先輩、それに芥川先輩の三人だった。


「なんや芽衣ちゃんもおるんやな。久しぶりやなぁ」


忍足先輩が私に話しかける。
こうしていると、氷帝にいた時のことを思い出す。私に興味もなにもないくせに、姉と仲良くなりたいがために、話しかける。私を姉と仲良くなるための道具としか見ていない、人達。


「じゃあ芽衣も一緒に行こ!」


姉はそんな先輩達に気づいていない。
明るく私の腕を引っ張る姉を、私は拒絶することなんてできなかった。



2012/03/03
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