my sister | ナノ




「つい数時間前にも会ったはずなのに不思議な気分だねえ」


荷物を部屋に運んでいると、姉は私同じことを考えていたようで、そう言った。
私と姉は同じ部屋で、あと青学にいるもう1人のマネージャーも同じ部屋らしい。まだ部屋に着いていないみたいだけど。


「でも芽衣が立海の人達とうまくやっているようで、安心したよ。私、正直心配してたんだよね。ほら、芽衣って昔から人見知りじゃない? だからいじめられたりしないかな、って」


姉は私に笑いかけた。
妹思いの優しい姉。端から見たらきっと私幸せ者なのだろう。姉は私に優しい。私は、姉のことは嫌いじゃない。むしろ好き。だけど、心を開いていない。家族なのに、ね。姉はそのことに、気づいているのだろうか。

憧れは嫉妬。
そんな言葉があるけれど、それはまさに私の姉に対する思いに等しい。
私は姉に憧れている。姉のようになりたい、そう思っている。けれど同時に恵まれた才能を持つ姉に嫉妬している自分がいる。そして私は、そんな醜い自分が一番嫌い。

その時、バッと部屋のドアが開いた。
そして部屋に入ってきたのは焦げ茶色の髪をポニーテールにした可愛らしい女の子。多分、青学のマネージャーだろう。


「あ、青学のマネージャーさん? 私は氷帝のマネージャー、2年の遠藤深衣。よろしくね」

「あっ、えっと、妹の芽衣です」


挨拶をする姉にならって私も名乗れば、女の子は「ふーん、そう」と素っ気なく返し、黙って荷物を置いて支度を始める。姉は少し驚いたように目を丸くしていた。


「私の荷物、勝手にいじらないでよね。じゃ、」


準備が整ったのか、暫くすると、女の子は名乗りもニコリと笑いもせずに、ましてあ私達と目を合わせることもなく、颯爽と部屋から出て行った。



2012/03/02
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