my sister | ナノ


暫く先輩達や湊ちゃんとで話をしていれば、泉山先輩は「ちょっとお手洗いに行ってくるね」と言って病室を出て行った。途端、病室は静寂に包まれる。


「あの、幸村さん、芽衣さん。すみません」

「……え?」

「お二人にとって、お姉ちゃんは大切な人だったんですよね? 私のせいで、立海から去ることになって、ごめんなさい」


突然、湊ちゃんは頭を下げる。私はどうしたらいいのかわからなくて、ただ呆然としていた。


「……私は小さい頃から病弱で、いつも父や母に心配ばかりかけていました。だから、父も母も、あまりお姉ちゃんに構っていなかったんです。お姉ちゃんは、しっかり者だったから。いえ、私が病弱だったからお姉ちゃんはしっかり者になったんですね、多分。でも、」

「お姉ちゃんはずっと、1人で、寂しかったんです。私にはわかります」

「だからお姉ちゃんはもっともっと、自分を見てもらえるように、いつだって頑張っていました」

「けど、私がアメリカに行くことによって、私はお姉ちゃんから完全に母と父を奪ってしまうことになってしまったんです」


湊ちゃんはそう言って目を伏せた。
しっかり者の姉と、病弱な妹。その関係はどこか、私は病弱にないにしろ、私の姉と私に、似ている気がした。


「母や父だけじゃなく、私はお姉ちゃんから友達まで奪ってしまいました」

「それは、違うよ」


ずっと黙っていた幸村先輩はが口を開いた。


「だって俺達は泉山とずっとまだ友達でいるつもりだし、引っ越す、って言ったって、ずっと会えないわけじゃない。会いに行けばいいし、奪ったなんて、それは間違いだ」


そう凛と言う幸村先輩がとてもかっこ良くて、ドキ、と少しだけ胸が高鳴る。


「それは、お父さんとお母さんに関しても同じだよ、きっと泉山は、湊ちゃんにお父さんとお母さんを奪われただんて、思っていないよ」


泉山先輩は、優しいから。だからきっと、そんなこと思ったりしない。
湊ちゃんは黙って頷いた。それで、「ありがとうございます」と小さな声で言った。



2012/01/31
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