my sister | ナノ


「湊はね、小さい頃から入院しているから、同年代の女の子の友達ってあまりいなくて……」


部活が終わった後。約束通り、私と幸村部長と泉山先輩は病院にいた。
泉山先輩はとある一室の病室の前で、困ったように眉を寄せた。


「湊? 私、瞳。入るよ?」


そう言って先輩が開けた先のベッドに座っていた女の子。大きな目に白い肌。泉山先輩に似て、可愛らしいまるでお人形さんみたいな女の子だった。
(私とお姉ちゃんも、これくらい似ていたらよかったのに)
女の子は私達を見た途端、ぱっと瞳を輝かせた。


「こんにちは! あ、幸村さんも来てくれていたんですね。えっと、それで」

「立海のテニス部の新しいマネージャー。私の後輩だよ」

「あっ、えっと、遠藤芽衣です」


私がそう言えば女の子は「泉山湊です」とにっこり笑った。


「湊ちゃん、元気だった?」

「うん、元気! 幸村さんもお元気でしたか?」


そう湊ちゃんが幸村くんに無邪気に微笑む姿を見て私はあれ、と首を傾げた。


「二人とも、知り合いなんですか?」


泉山先輩が引っ越すことをみんなに告げた時。部員の多くはまず泉山先輩に妹がいたことに驚いていた(柳先輩は別として)。だから、どうして幸村先輩は、って。


「あ……えっと、ね」


泉山先輩が言いずらそうにチラリ、と視線を幸村先輩にうつす。


「ああ、俺、実は中2、中3の時にちょっと病気で入院していてね。その時に知り合ったんだ」

「え、入院……ですか?」

「うん。中2の秋頃に倒れちゃって。暫く入院していたんだ」


初耳である。幸村先輩が病気だったなんて今の様子からでは考えられない。こんなにも、元気なのに。


「えっと、大丈夫なんですか?」

「うん、もう直ったからね」


だけど、そう言う幸村先輩はどこか悲しげに見えた。



2012/01/26
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