my sister | ナノ
静寂に包まれたテニスコート。呆然としている私と部員達。
「……遠藤、追いかけたらどうだ」
「‥で、でも、仕事が……」
静寂を打ち破ったのは、柳先輩だった。
柳先輩の言葉に、咄嗟にそう返してしまったのは、怖かったからだと思う。
追いかけて行って、拒絶されたら。
そう思った。だから逃げようと思ってしまった。マネージャーの仕事というのを、理由に、言い訳にして。
「少しくらい問題ないだろう。行け」
「……はい」
有無を言わさない柳先輩の強い口調に私は頷いて、泉山先輩が去って行った方向に向かって走り出す。
怖くてたまらない、拒絶されることが。
今まで、立海に来るまで、姉のことを抜きにしても、私に優しい先輩なんて、いなかった。だから、泉山先輩と仲良くなれて、本当に嬉しかった。なのに、仲良くなれた、って思ってたのは、私だけだったの?
「泉山先輩!!」
水道場の隅に、泉山先輩は座りこんでいた。名前を呼べば、泉山先輩はそっと顔をあげた。
顔を泣きはらしていて、真っ赤に充血した泉山先輩と眼が合って、私はハッと息を飲む。
逃げちゃ、ダメ。ここで逃げたら、いけない。
私はそう自分に言い聞かせながら先輩へ近づこうと一歩踏み出した。
2011/01/05
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