my sister | ナノ



気まずい気まずい気まずすぎる。
あれから悪いと仁王先輩は無事幸村部長によって送り出され、私は内心焦りで一杯なのに仁王先輩は涼しげな顔をして私の隣を悠々と歩いていた。


「のう」

「ひいいいいっっっっっ!!?!」


やばやばやばい。
急に話しかけられたため悲鳴の如く声をあげてしまった。仁王先輩があまりにも冷めた目で私を見るので取り敢えず「す、すみません」と謝る。幸い、仁王先輩はたいして気にしなかったようで、話を続けた。


「……遠藤は中学は氷帝だったんじゃろ? そこでもテニス部でマネージャーをしとったのか?」


それはきっと純粋な疑問。
私みたいな勉強も外見も運動も平凡なるただの女子が何故、競争率も高く妬まれやすいテニス部のマネージャーになったのか。それを考えるための材料の、一つとして。


「いいえ。……あ、でも……」


その問いを否定しようとしたが、私はあることを思い出してしまい、言葉を濁した。
一度だけ。一度だけ、姉に頼まれて氷帝テニス部の臨時マネージャーをやったことがあった。思い出したくもない、苦い思い出。
姉は勿論、仕事をやっていた。私だって、それは同じ。だけれども、テニス部が笑顔を向けるのはいつも姉で。
拭うこのできない孤独感。あの時の思いは忘れることができない。


「でも……なんじゃ?」


私はチラリ、と仁王先輩を盗み見た。
姉が、マネージャーをやっていたことは、言ったほうがいいのだろうか? いや、でも……


「なんでもないです」


仁王先輩が姉に興味を持つのは嫌だった。それどころか、姉の存在を知られることすらも嫌だった。



2011/11/01
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