my sister | ナノ




「綺麗な人だったねえ。芽衣ちゃん、あんな人がお姉さんだなんて羨ましい」

「うんうん。っていうか、周りにいた男の人達もなんかかっこ良くなかった? 立海の男子テニス部といい勝負」


また、だ。
キャッキャッと騒ぐ友達に少し不安感が募った。もしも、折角できたこの友達が、私よりも姉を選んでしまったら。


「芽衣ちゃんのお姉さんって、あんまり芽衣ちゃんに似てないねー」


梓ちゃんが何気なくそう言った時、私の胸に何か重たい物が落ちてきたかのように感じた。


「う、うん。よく言われる」


俯いた。
どうせ私なんて、という思いが胸を渦巻く。
姉に比べたら私の存在なんてちっぽけなものだしそれは変えようのない事実。
今まで、姉のせいで辛い思いを何度もしてきた。だけど、それでも、私は姉を憎むことができない。それは、姉が私に対して多大な愛情を注いでくれているから。恋人なんていない今の姉から一番愛情を貰っているのは多分、私。だから、憎めない。自分に対してたくさんの好意を向けている相手を憎むなんてこと、私にはできない。


「そうかなあ? 私は結構似ていると思うんだけど」


めぐちゃんが首を傾げながらそう言った言葉に私はハッとして顔を上げた。


「なんていうか、纏うオーラ? 雰囲気? みたいなのはすごく似てると思う。それにほら、笑った時の目の感じとか」

「あー、言われてみれば」

「確かに」


同意する友達。
初めてだった。姉に似ているなんて言われるのは。だから、戸惑って、なんて返せばいいのかわからなくて、素直に喜ぶことも何故かできず、曖昧な笑みを私は浮かべた。
だけど、ただ胸がとても温かくって。


2011/10/14
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