my sister | ナノ



マネージャーの仕事も板についてきてクラスにも馴染めた頃の久しぶりの部活がオフの休日。私は友達三人と映画を見に行く約束をしていた。
中学の頃は友達と遊びに行くなんてこと滅多になかったから、お母さんは少し驚いた表情をして、でもどこか嬉しそうに、よかったねえ、なんて言ってくれた。


「ううっ、今の映画チョー泣けたぁ〜」


目をゴシゴシと摩りながら隣で歩くのは梓ちゃん。その隣にははなちゃんとめぐちゃんがいる。互いに席が近く、喋っていたら意気投合して自然と映画を見に行くことになったのだ。


「……あれ、芽衣!」


映画を無事見終わり、道を歩いていれば、聞き慣れた声が耳に飛び込んできた。声のしたほうを向けば、姉と、その友達である氷帝男子テニス部の何人か。
ひやり、と嫌な予感がした。


「え、なにあの人すごい美人。芽衣ちゃん、知り合い?」

「う、うん。えっと、姉」


そんな私の気持ちを知らず、姉は手を振って私の方へと近づいてくる。


「奇遇だねー、こんな所で会うなんて。芽衣のお友達? こんにちは」


勿論、姉が来るということは、一緒にそのお友達である氷帝の方々も私達の近くに来るわけであって。
ちなみに今姉といるのは宍戸先輩、向日先輩、忍足先輩、芥川先輩、鳳くんの五人だった。

姉達が今日、この辺にいるだなんて知らなかった。
だって姉は部活が無い時は毎日のように友達と遊んでいた。だから、


「あ、そう言えば亮達には言ってなかったっけ? 芽衣、立海の男子テニス部のマネージャーになったんだって! あたしとお揃いー」

「ふーん、じゃあ試合ん時とかに会うこととかあるかもしれないってことか」


宍戸先輩はあまり興味がなさそうに言うが、姉はそれに気づかずにうん、とにこやかに頷いた。


「もうそろそろ行こーぜ」


そう姉を促したのは向日先輩だった。一刻も早く姉を独占したいらしい。私達と、私といるのは時間の無駄。


「うん、そうだね。じゃあね、芽衣!」


それにも気づかず姉は私に手を振って行ってしまった。
だんだんと姉の姿が見えなくなって、その途端、ホッと私は息を吐いた。



2011/10/11
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