「なーなー、知ってるか? 今日、転校生来るんだってさ!」


5月。梅雨が始まろうとしているこの季節に我が氷帝学園中等部2-Cに転校生が来るらしい。
そのことを同じクラスであり私の前の席である向日岳人が朗らかに告げた。
知ってる? だなんて、そんなこと、君達以外に話せる人なんていない私が知るわけないじゃないか。


「男? 女?」


頬杖をつきながらそう問えば向日は「知んねーけど……」と、口籠る。


「けど! こんな時期に転校生だなんて珍しいじゃん!!」

「うん、そうだね」


ちなみに。彼等は決して女嫌いだとかそういう設定があるわけじゃない(ただ、私に危害を与える人には容赦しないけど)。
それにしても。こんな時期に転入生だなんて、本当に、確かに珍しい。これで転入生が逆ハー狙いの美少女とかなのが王道なんだろうなぁ。



*****




「初めましてぇ! 姫川愛菜です!」


とか思っていたら、転入生は本当に 美 少 女 だった!
なんかぶりっ子っぽいけど! なんかぶりっ子っぽいけど! 大切なことなので二回言いました。


「愛菜はぁ、テニスが大好きなんだけどぉ、ワケあってできないからぁ、“男子”テニス部のマネージャーやろうと思っています! だからテニス部の皆、よろしくねぇ?」


そして私の気のせいかもしれないけど姫川さんは向日をガン見した。
え、何。もしかして本当に逆ハー狙い? トリッパーとか? いやいやいや、いくらなんでもそれはないだろう。
だけど、彼女は本当に美少女である。この人数の多い氷帝でも1番とまでいかなくても5、6番目くらいにはかわいいのではないだろうか。

大きな目、少し茶色味のかかった長いストレートの髪。白い肌。
それだけに、厚化粧をしているのがただただ残念だ(まだ中学生なのに!)。

担任が「姫川さんはそこに座って」と指差した席は廊下側の1番後ろ、サッカー部の広田くんの隣の席だった。そしてまた気のせいか、姫川さんは少し落胆したような表情を見せた。



2012/06/14



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