はぐれものたちのラブソング
せっかく、逃がしてやろうってのに。
「獪岳…置いて、行かないで…。わたしも、わたしも連れていってよ。食糧にしたって構わないから、ねぇ、お願い。」
零れた涙が俺の服を濡らし、染みを広げてゆく。その縋り付く瞳が、声が、コイツの全てがめちゃくちゃに掻き乱したいという欲を沸き上がらせた。それは今まで感じたことがないほどで、ふるり、と身が震える。
心のどこかで、こうなる事を期待してい俺がいたのも否定はできない。むしろここまで堕ちて来てくれれば都合がいい、とすら思っていた。
「…テメェは普段からそれくらいしおらしくしてろよ」
その日、1人の女が消えた。
毎夜、彼らを照らした月だけが、それを知っている。
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