目に映るのはあなただけ




楽しそうに仲のいい隊士や隠達との話をする名前を見ていると、気がつけば口を滑らせていた。

「なぁ…俺を、見てくれよ」

あぁ、遂にこぼしてしまった。この思いを伝えるつもりは無かったのに。俺たちは…特にコイツは、いつ命を落とすか分からない場所で挫けず戦ってる。それに俺は多くの隠の中の一人だから。この思いは不毛だと、捨てようと思っていたのに。情けなくなって咄嗟に背を向けた。
俺達の間には冬の乾いた風が寂しく吹く。やけに冷たく、そして鋭くて肌に痛い。沈黙が続いて、いつもはよく喋る奴だからそれが随分長く感じた。
思わず背を向けてしまったけど謝らないと、そう思って振り返ろうとしたその時だ。名前は俺の手を握って…後藤さん、と呼びかけた。その声がいやに、融けそうな声をしていた。握られた手からは優しい温もりが伝わってくるのに、声は熱を孕んでいてその乖離にどきりとした。

「私は後藤さんのこと、目に入れても痛くないほどには好いてるんですが」

握られた手と布の下の顔が…いや全身が、熱い。お前の目が俺をさらって、焦がしているみたいだ。かと思えば我に返ったかのように、
「…そ、その、後藤さんは、ドウデスカ…」
なんてどんどん彼女の顔は真っ赤になって言葉尻は萎んで言って。よほど恥ずかしかったのか涙目になっていた。先程とは全く異なるその様子にまた酷く愛おしさが渦巻いて、思いっきり抱きしめた。

「俺もお前が好きに決まってんだろ!」





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