人工呼吸




残り少し、あと少しだ。お互いの吐息を交ぜあわせているこの距離を妙に意識してしまって、まるでこいつに口移しをされているような、そんな感覚に陥ってしまうものだから、あと少しの距離を詰められずにいた。視線を上げられないくらい恥ずかしいのに、妙に気分が昂ってしまう。

ぱきり。

力が入ってしまったのだろう、菓子は折れてしまった。欠片を口にくわえたままで俺は飛び退いたけど、それをどこか名残惜しく思っている自分がいる。残念、と呟いた名前はいつも可愛いと思っているのが嘘のように、噎せ返りそうなくらいの色気を纏っていた。思わず走って逃げてしまったが、その姿がしばらくの間、昼夜脳裏に張り付いて取れなかった。





戻る


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -