未来で待っていて
食んだ指は途端にびくりと震える。いつもは余裕のあるその表情は驚きに満ちていて、少しいい気分がした。そのままゆるりと柔らかな指に舌を這わせ、少し強めに噛んで離す。伝った銀糸はぷつり、と切れた。
あぁ、きっと俺の顔も真っ赤なんだろうけど。名前さんもいつも以上に頬を染めていて、二人して黙り込んだ。
「…先約」
沈黙を切ったのは俺だった。その二文字を聞いた名前さんの熱を孕んだ瞳が、途端に潤んで。玄弥くん、本当にいいの、なんてまるで夢でも見ているかのように彼女は言う。嬉しいだとか、あなたじゃなきゃ無理だとか、そんな在り来りな言葉じゃ足りなくて、全部振り払って俺は彼女を抱きしめた。
薬指にはくっきりと、赤い一筋の指輪が収まっていた。
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