魔女たちの秘事




一年ぶりね、そう言って笑う名前さんは前よりも益々可憐に、そして美しくなっていた。もう何度目の逢瀬か分からないほどの年月が経ってしまったけれど、会えば会うほどあなたは年月を感じさせないどころか美しさに磨きがかかる。
それから名前さんと、他愛の無い日頃の話や家族のこと、最近出来た弟子のことで盛り上がっているうちに宴もたけなわとなっていた。冷たい風が少しずつ2人の身を冷やしていく。私たちにとっては短い期間だとはいえ、また次に会えるのは1年後。そう思うと離れるのが口惜しくなってしまっていた。姉から聞いた人間の間で流行っているというハロウィンの合言葉をふと口にしてみる。

「Trick or Treat」
「へ?」

案の定、彼女は鳩が豆鉄砲食らったような顔をして驚いているようだった。そのまんまるとした瞳を食べてしまいたい衝動を抑えてさらに名前さんを揶揄う。
「知らないんですか?ハロウィン。最近人間の間では流行っているそうですよ」
「いやぁ知ってるけど、まさかしのぶちゃんの口からその言葉を聞くとは思わなくて」
「あら、なにか不都合でも?」
「わかってるくせに」
そう言って彼女は目を細めた。どうやらこちらの目論見は半分お見通しのようだ。
「では悪戯をしなければなりませんね?…そうですね、これを頂きましょうか」
その細い首に付けられているお揃いのチョーカーをそっと外すと名前さんは珍しくおろおろと焦り始めた。

「ふふ、返して欲しいならどうすればいいか、賢いあなたなら分かりますよね?」

これがあなたと次に会える口実になればいいのに。願わくばこの年に1度の機会以外にも会いたいだなんて。そう思ったわたしはなんて欲深いのでしょうね。






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