※マルコ×ジャンルカ
デキてない



 まだ慣れない例の感触は不意に襲ってくる。今日は路地裏で、昨日はグラウンドで、一昨日はシャワールームで、一昨昨日は、――。
 ちゅ、と小さな音の後、彼は笑った。そして再び唇を塞ぐ。
 甘い、と初めてキスをされた時に言われた。そんなわけあるか。女の子に言えば喜ぶだろうに、その言葉は男の俺に向かって言われた。
 歯列を舌がなぞる。最近、こいつは調子に乗って舌さえ入れてくる。ああやめろ、腰を抱くな。俺も背中にしがみつくな。
 優しく彼が名前を呼ぶ。
 口の中はとろりと蕩けて、甘味が残った。
 一昨昨日はジェラートを食べた後、一昨日はピザの後、昨日はスポーツドリンク、今日は、――。

「甘いね」

 頬を撫で、口の端から垂れる甘露を拭われる。透明な蜜はこいつの……。

「皆には秘密ね」

 指先を唇に当て、釘を刺す。言うわけないじゃないか。
 そうして今日も俺は二つの秘密を抱える。






ひ:秘密が好きな君




2010.09.12









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