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「お待たせ」

 アフロディが椅子に座る。緑色のトレーの上には、アップルパイとコーヒー。お前は女か、と突っ込みたくなるが、こいつは少食である。胃が小さいのか。それに比べて、俺と風介。ダブルバーガーセットにチキンナゲット、ポテトLを半分ずつ。よく食べられるね、気品ないね、と言ってくるアフロディはファストフードだというのに、とても優雅にコーヒーを一口。何時から此処はカフェになったと言わんばかりの雰囲気で、少し惨めになる。どうせ俺はがっついていて、見ていて汚い食べ方ですよーだ、くそ。

「二人共、仲良くていいよね」
「何で」
「だって、一緒にポテト分け合ったりして」

 ジュースも一緒でしょ、と言われて互いの紙コップの中身を見た。プラスチックに透けて見えるオレンジジュース。いつ分かったんだと問えば、アップルパイを食べつつ、

「匂い。僕、鼻が利くんだ」
「犬か」
「んー、犬かあ。うん、犬?」

 林檎ソースを口にして、アフロディは顔を歪ませた。慌てずコーヒーを飲んで、ふうと一息。

「甘すぎるね、これ」
「甘いの苦手?」
「ちょっとね。だから紅茶より、コーヒーが好きだよ」

 そう言いつつも、アフロディはアップルパイを食べ進める。息を止めつつ、口に少しずつ押し込んで、コーヒーを流し込んで。苦手な物を頑張って食べている姿は、中学二年生として相応しいものだ。

「今度から気をつけよう」
「何でアップルパイなんて頼んだんだ」
「ん、美味しいって勧められたから」
「鼻は利かなかったな」

 俺の妨害を掻い潜り、風介は最後のナゲット一個を勝ち取った。しかしそれを食べず、ナゲットとアフロディの間を視線が行き来して、やがてアフロディにそれを差し出す。
 首を傾げる相手に対し、風介は一言簡単にやる、と言った。

「いいの?」
「ん」
「ありがとう」

 ぱくりと軟らかい肉が、口の中に消える。ナゲットも気品ある人間に食べられて嬉しいだろう。

「美味しいね」
「これも食べろ」
「あ、すごい。なんか芋! って感じ」
「元神が芋!」








に:苦い味が好きな君




2010.09.12









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