※幻想入り バーン+紅美鈴
 めーさくっぽい



 額の間から、紅い血がたらたら流れている。頭には銀のナイフ。大怪我である。救急車だー119だーその前に110だーと騒いだのは最初の頃。やっとこの光景にも慣れてきた。

「本当に、懲りないな」
「誰だって、眠気には逆らえないでしょ」

 美鈴はナイフを突き刺したまま、平然と言ってのけた。
 買い物に行って帰ってくると、いつもこうだ。ナイフが刺さっていない方が珍しいくらいだ。
 ナイフを一気に抜くと、ギャグ漫画のように血がぴゅーと溢れて止まる。妖怪は人間と比べて、体は丈夫だし傷の治癒速度も速い。それでもほぼ毎日ナイフで刺されてちゃ敵わないだろうに。

「咲夜さんも、容赦ねえよなあ」
「えー、そお? うふふ」
「え、なにきもちわるい」
「咲夜さんは結構優しいのよ」
「うん、そうだけど」

 怒ると怖いけど、咲夜さんは基本優しい。紅魔館に働くようになったその日、俺に服を作ってくれたりもしたし。
 ああ、そうそう。

「はい」
「何?」

 買い物袋から林檎を出して、美鈴に渡す。相手は首を傾げつつ、林檎の赤い表面を見て笑った。

「咲夜さんが、店で一番良い林檎買って、あんたにあげてって」
「え、ええっ」

 かあ、と林檎みたいに赤くなって美鈴は叫ぶ。とても嬉しそうに林檎を見つめてにへらあと顔を緩めたり、頬擦りまでしだした。本当に、あんたは門番なのかというくらいの隙だらけな表情。
 そんなに林檎が嬉しいのか。咲夜さんが好きなのか。
 あ、そっか好きだから、構ってもらいたいのか。一人納得した時、顔の横をナイフが通り過ぎていった。







な:ナイフが好きな君




2010.09.08









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