※俺×リュウジ
日本代表選考試合の朝
昔貰った手紙を引っ張り出せば、やはり懐古の念にとらわれる。あの頃はあいつも小さくて、可愛かったなあ。まだ字もうまく書けないから、解読するのに時間もかかって。今書く字は、俺が教えた習字のおかげで学校で褒められるという位綺麗になった。大人顔負けの字はやはり誇らしげに見える。サッカーも上手だし、今までやってきた行いも、中学生の歩む道から随分遠いところにあった。唯一、中学生らしいのは負けず嫌いでグリーンピースを弾くような性格。子供にとって、辛い事をさせてきたのだな、社長は。それも仕方がない事だけど。
ぐちゃぐちゃになったシーツを手に抱きながら、リビングに行くと、テーブルには置き手紙のメモ。
「頑張ってきます。そっちも遅刻しないように。いってらっしゃい。 リュウジ」
お前は母親か。ちょっと吹き出す。しかも字が俺より綺麗すぎ。今日は彼が帰ってくるまで、落ち着いていられなさそうだ。
「やば」
時計は九時を回ろうとしていた。そろそろ出なければ、講義に遅れてしまう。その前に。
「おかえり、お疲れ。早く帰れるようにする。ちゃんと起きて待っているように」
て:手紙が好きな君
2010.09.08
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