※若泉×中谷 R-15くらい



 眼鏡のブリッジが離れていく。ぼやける視界の中、手を突き出すと生温かい体温をした中谷の肌に当たる。少しだけ震えた体がもたれかかってきて、やがてぴたりと胸と胸同士がくっつき合う。体温を分け合う事はお互い初めてだ、と思いたい。二人の鼓動が体を伝わって、認識できる。俺は中谷の体を抱いて、緊張する気持ちを落ち着ける。でも止まない。相手は無言のまま動かずにいる。どきどき、この音だけが耳に届いた。

「な、なあ、やっぱやめない?」
「ここまできて?」
「緊張して……」
「そうしたらいつまでも、このままだ」

 中谷は焦っているように見えた。俺が裸の背中を撫でようとするも、体を捩って先へ急ごうとする。

「その、したいだけならお断りだけど」
「そうじゃない」

 彼は顔を近づけて、額をぶつけてきた。眼鏡がなくてもよく見える。俺はそこにキスをした。

「お前は、俺が好きなんだろ?」
「そうさ、大好きだ」
「だったら、嘘じゃないって教えてくれ」

 中谷は体を起こして、俯いた。胸に、冷たい水滴が落ちてくる。
 中谷は人間不信だという。今までに何があったのか知らないけど、俺は彼の腰を抱いた。もう騙されたくない、と言っていた。俺が冗談半分に好きと言うのを嫌だった。でももう本気で好きだと言っているのに、気付いているだろうか。俺は中谷を見上げて、微笑みかける。

「好きだよ、真之」

 その後、彼は泣きながらキスしてくれた。それがどうも、俺には一種の呪縛のように思えてならなかった。







た:確かな事が好きな君




2010.03.31









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