※南雲+涼野
胃がきゅう、と締め付けられた。全て消化されて空っぽになった腹の為に食品庫の中を漁る。入っていたのは赤と緑のインスタント麺。眉に皺が寄るのを感じた。インスタントという気分じゃない。それでも腹は食べ物を求めて小さく呻く。この際何でもいい。わたしは緑の方を出して、やかんに入った湯を注ぎいれた。
約三分。蓋の隙間から立ち昇る湯気から、かつおだしの良い匂いがする。
きゅうきゅう、食欲が騒ぎ立てる。
ピンク色の砂時計の最後の一粒が落ちる頃、箸を手にとって天ぷらのビニールを破る。蓋をぺりぺり剥がして、透き通ったつゆの上に天ぷらを浮かべる。染み渡っていくつゆに天ぷらは重く沈んでいく。
一口、麺を啜る。
……まあ腹が減っているからインスタントでも美味しく感じるのだな。
ずるずる。ずるずる。
「あれ、何食ってんの? ……珍しい緑のたぬき」
ずるずる。
「美味い?」
ずるずる。
「蕎麦好きだっけ?」
ずるずる。
「おい、何とか言えよ」
「――好きで何が悪い!」
そ:蕎麦が好きな君
2010.04.10
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