※南雲×涼野



「おい、チューリップが浮いてるぞ」

 赤い一房を突いてやると、水の中で抗議があがる。だが、ぼこぼこの音で何を言っているのか分からない。続けて房を掴めば、ざばーと晴矢が立ち上がった。水がばしゃばしゃと浴槽が落ちる。

「やめろよ!」
「敵に見つかって魚雷直撃といった所だ」
「魚雷じゃないし! 上から来たし!」

 また晴矢は水の中へ潜った。何でそれが好きなのだろう。人は陸でしか生きていけないのに。ぶくぶく鼻から抜けた空気が浮いてくる。わたしは真ん中を陣取る晴矢を避け、湯に浸かった。足に彼の体が当たる。しつこく当ててくるので、蹴ってやれば水の抵抗がかかって重くなった足はそんなダメージを与えない。

「何だよ」
「お前が何だ。潜ってばかりで子供か」
「子供だもーん、ぶくぶく」

 潜られる。わたしは一瞬の隙で足を伸ばして、晴矢の体を挟んだ。かに挟みで動けなくなった彼が浮上してわたしの足を引っかく。

「危ないだろ」
「お前が悪い」

 わたしは足を一本離し、晴矢の体をなぞった。ぴくりと体が跳ねる。

「何?」
「こうしても分からないか。お子様め」

 そして再び水の中へ引きずり込ませた。







せ:潜水艦が好きな君




2010.03.31









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