※俺×ヒロト
屋上で待ってたヒロトに二枚目の毛布とホットミルクを渡した。ありがとうと礼を言ってくれる彼はとても可愛い。俺は自分の分のコーヒーを飲んで、空を眺めた。都会から離れた空気の澄んで冷たい此処はとても星が見える。ここまで見られるのかという細かい光の粒子たちが洪水を空に作っていた。時折瞬く一番大きな星たちがヒロトのお目当てらしい。星座盤と本を持って熱心に星を見つめている。俺はコーヒーを一口。湯気が風に揺れて彼の元へ香りを運んだ。
「コーヒーくさい」
「いいじゃん。カフェオレにするか?」
「あ、いいね。それ」
ヒロトのカップを受け取り、その中にコーヒーを入れてやる。暗がりで色は見えないが、まろやかになったその匂いが漂ってきた。
「おいしい」
「良かったな。何を探してるんだ」
「シリウス」
「ああ、シリウスね」
あれだ、と輝く一つの星を指差すとヒロトは嫌そうな顔をした。
「嘘でしょ」
「ばれたか」
「ばればれ。あーもういいよ。また今度探すから」
星座盤が放り出された。俺はそれを拾って、豆電球で明るくなった一箇所に色々照準を合わせる。
「ヒロト」
「何」
「スーパーノヴァって知ってるか?」
「ジェネシス最強の技」
「それもそうだけど。星が死ぬ時の光を言うんだ、スーパーノヴァ」
「星も死ぬの?」
「ああ、だから早くしないとシリウスも……」
「貸して」
ヒロトは俺から星座盤を奪って、また熱心に空を見だした。
ちょっとした冗談だったのに。まあ可愛いからいいか。
俺も空を仰いで、彼の為にシリウスを探し出す。
し:シリウスが好きな君
2010.03.17
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