※レアン+アイシー



 彼女が育てていた桃色の花弁が静かに落ちた。雌しべだけを残したその下には落ち切った花びらたち。美しく咲いたのは一時だけ。時が来ればすぐに枯れて死んでしまう。私は彼女に花びらが全てなくなってしまった事を教えた。

「今回は結構長かった」
「あんたは悲しくない? こんな寂しそうな格好になった花を見て」
「そうだけど」

 彼女はそれを捨てずに水を与え続けた。そうしても、もう一度花は咲かない。何がしたいんだろう。とうとう葉の先から茶色く乾き、枯れてきた。それでも適度に水をやり、5日後に枯れ切って萎れた。鉢に挿していた花のネームプレートが抜かれる。

「何で押し花にしないの」
「いいの、しなくて」
「じゃあ、何でこの花を選んだの」

 彼女はにこやかになる。プレートを抜いた時の表情より幾分か明るくなった。

「それはあんたに似てるから。謙虚で気取らず、素朴な感じが素敵だと思った」

 枯れた花を持って外に出る。私もそれを追い、家の外のプランターにまかれて埋められる土と枯れ草を見つめた。

「花が精一杯生きたら、こうして土に還して他の花へ栄養を与えてもらうの」
「自然の肥料って事かあ」
「そう。さっき押し花にしないのかと聞いたでしょう」
「ええ」
「生きる花の命を奪ってまで、一生残す事はないからね。それは例えれば、あんたを殺して冷凍保存するのと同じ」

 冷たい肌をしたあんただって、それは嫌でしょう。私は頷く。そんなの絶対に嫌。そうしたら彼女とはもう会えなくなってしまう。

「それに、私にはあんたが居るもの」

 この花みたいにね、彼女は大切そうにネームプレートをしまった。







こ:コスモスが好きな君


(じゃあ、また来年に)



2010.02.16













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