指切り [ 6/18 ]

『わかー、わかー。』
『わか、テニスしよう?』

『あたしはテニスなら負けないよ?』
『これ、アメリカからのお土産。』
『若、あたし学校はね――――』

「…………えっとね、若?これには深い訳が。」


記憶の中の少女と目の前の少女は一致した。



「……まず、なんでこの学校にいるんだ?お前、たしか日本にいた時は立海に通ってたよな?」
「まあ、ちょっと色々あって………。家から近くてテニス強いし……。」

しどろもどろに答えるリョーマの目はふらふらさまよっている。

「なら、なんで女テニじゃないんだ?」
「……………………。」

押し黙る。こういうリョーマはまず口を割らない。昔からそうだ。


「……………なら、なんで<越前>なんだ?」

ビクッ、となるリョーマ。

「…………………………大人の、事情……?」
「答えになってないんだけどな……?離婚とかじゃないんだろ?」
「うん、まあ……。」
「ならいいけどな。」

ふぅ、と息を吐き、いきなり現れたこの腐れ縁兼幼馴染みへの質問をやめた。こいつが話さないなら親父さんにでも聞けばいい。
リョーマがキッ、と真剣な表情になた。

「若、俺がさ、立海から来たことと、……にいの事は黙っといてくれない?」

俺、という一人称に思わず眉をひそめる。

「まあ、しばらくはそれが最良か。……跡部部長は鋭いぞ。いっといた方がいいんじゃないか?」
「ん、跡部部長にも黙ってるつもりなんだけどね。これから全国目指すんだから、まずは信用されないことには始まんないし。しばらくは様子見かな。」
「……俺が言うとか考えないのか?」

そうゆうとリョーマは不思議そうに首をかしげた。

「なんで?若が言うわけないじゃん。」

俺がリョーマの味方で、リョーマが俺の味方で。当たり前の事を思い出す。腐れ縁で大切な幼馴染みの頼みごとを断る訳が無いのはお互い様だ。



「なら、約束しよっか。若がそのことを言わない事。かわりにあたしが若を正レギュラーにする事。」
「リョーマがか?」
「うん、手伝うよ。当たり前じゃん。」
もう何回もした約束の印。小指を絡める。
「嘘ついたらファンタ奢り。指切った!」

目の前で無邪気に笑う幼馴染み。
生意気だっていわれてるが、本当は違うのを知っているのは多分俺とリョーマの兄貴だけ。テニスをしている時以外は普通の女子だ。
なら俺がリョーマを守る、っていう約束を潜ませたのは秘密だ。



やべえ日リョっぽいこのリョーマさん誰
リョーマさんは「若」で「わか」と呼んでいる無駄設定。恋愛ではなく家族愛で親愛に近い。


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