教育係 [ 4/18 ]
越前リョーマは氷帝ジャージに袖を通し、スカートから見える細くて白い足を広げ、コートに仁王立ちしている。コート周辺に集まっていたギャラリーの女子達が騒ぎだす。
「誰?あの女?」
「見た事無いわよ。一年?」
「マネージャーって、本当なの?私達でもなれなかったのに!」
嫉妬と怒りが感じられて、はあ、と思わず溜息をついてしまった。
確かに設備は超一流だけど、周りのギャラリーうるさい。ファンは大切にするのは当たり前だが、まずそのファンがルールを守るべきであるのに。歓声や応援と嬌声は違う、なんて事を言ってこようかなんて考える。
ただ、それを言うとまた騒ぎだすのは確実だろう。
ひとまずギャラリーは無視をして、各自でアップを始めた部員を視る。
(名門だけあって準レギュラーと正レギュラーのフィジカルは高い…けど。)
足りないところも多い。とりあえず持久力をつけるか、と思い持っていたノートに書き込む。300人は流石に多いが、何とかするしか無い。だって。
(あの人の率いるチームに勝つから。絶対。)
努力は怠らないに限る。だから俺は視る。
まだ全員には俺の事は伝わって無いのか、部員の一部がチラチラとこっちを見てくる。どうしようか、と考えていたら、呼ばれた。
「おい、チビ。」
「…………………俺の事っすか。」
「お前より小さい奴がどこにいる。」
跡部部長が話しかけてきた、瞬間ギャラリーの女子から甲高い声が上がる。正直煩い。目の前にいるこの人は間違いなく美形だろう。しかも稀に見る超美形。ただチビはなんだチビは。
確かに背の順は前の方だけれど、学年探せば俺より小さい奴だっている……はず。なんとなく不服なまま返事をする。
「で、なんですか跡部ブチョー。」
「……まあいい。本題だが、榊先生からの要望でお前に教育係をつける。」
「へっ?」
「榊先生から、お前を一人でフラフラさせるな、という連絡を受け取ってな。準レギュの良さそうな部員を一人付けろと言われた。」
たしかにまだ不慣れなココでは教えてくれる人がいると楽だ。だが、なにか違う意味もある気がする。
「……まぁ、別にいいっすけど。」
「ならこっちで勝手に決めるぞ。」
「ウィッス。」
そう言うと跡部部長は準レギュのコートをしばらく見てから、一人に声をかけた。
「おい日吉!」
「‥‥…なんですか跡部部長?」
やって来たのは茶色い髪の二年生で。
「女子マネージャーが入る事になったのは知ってるな?こき使って構わないから雑用とかを教えてやってくれ。」
「…部長命令なら仕方ないですね。で?誰ですか?」
「このチビだ。」
心底嫌そうにこっちを見てきた。目が合った瞬間、気付いた。
「………若?」
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