「優しかったよ、少しだけ。」 [ 18/18 ]
8話の後。
日吉とリョーマ
「おい、リョーマ起きろ。」
「……………んぁ?わか………?」
「…よだれ出てるぞ。」
今日は放課後テニスしようとリョーマに(無理矢理)誘われ、委員会の仕事の当番があるというのでわざわざ迎えにきてやった、というのに。
肩を揺すり、なんとか起きたリョーマは、はっとして手で口元をごしごし拭き、じとっ、とにらんできた。
「遅い。ばか。」
「寝てたから関係ないだろ?あと仕事何分までかかる?」
「40分までだから……25分、くらい?」
「課題やってるから待ってやる。時間きたら教えろよ。」
「りょーかい。」
そういうとリョーマはまた寝る体勢を作り始めたので数学の教科書で頭を叩いてやった。角が当たったらしく小さくうめいた。
そういえば、と、ふと思う。
「おい、リョーマ。」
「何?」
「さっきまで跡部部長いただろ?」
「へっ?……あ、うん。手伝ってもらった。」
「手伝い?何を?」
「えっと………あれ?何だっけ?」
忘れたのか、と内心溜め息をついたが今に始まったことではない。寝起きのリョーマはたちが悪い。そういえばさっきすれ違った跡部部長の動きは何かちぐはぐしていた。
「……ああ、なんとなく理解した。」
「えっ何教えて」
「自分で思い出せ。」
ブツブツ文句をいうリョーマを尻目に課題をとく。思い出す確率が物凄く低いことはすでに立証済みだ。心の奥で跡部部長にお疲れ様ですと言う。
「あ、でも。」
何かを思い出したリョーマは少しだけ、ふわっとした顔になった。
「優しかったよ、少しだけ。」
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