無我の境地 [ 17/18 ]
俺の兄は、とっても強い。
正直、試合やって勝てたのは二回しかない。
一回目は無我の境地を初めて使ったとき。
二回目は――――――
「リョーマちゃん!」
「リョーマ様!」
久しぶりに無我の境地を使った反動でぼーっとしていたら、桜乃と朋香が話しかけてきた。
「凄い凄い凄いですリョーマ様!!あんなに簡単に勝っちゃうなんて!」
「リョーマちゃん、凄い……!」
笑顔で話しかけてきてくれる二人を見て、心がふわっと軽くなる。
「リョーマ!!」
「あ……、若。」
怒りとも飽きれともつかない顔で若が近寄ってきた。
「結局左手使ったんだな。」
「…………………うん。だってさ、」
試合中に相手の先輩が俺に言った言葉。
『なんであんたばかりが跡部様のお気に入りなの!?』
「………別にお気に入りじゃないし。馬鹿にされてるだけだし。」
「?」
テニスとも関係なく、見に覚えのない言葉に正直いらついただけ。
「チビ!」
遠くから声をかけられる。
「…………部長?えっ、なんで正レギュラー集合しちゃってるんですか?」
見るとフェンス越しにレギュラー全員がいる。試合を見てた、というわけだ。なぜか恥ずかしくなってくる。
扉を開けて、そちら側に入る。
「お前、何者だ?」
何回も聞かれた気がするこのセリフを部長が言う。
「言いましたっすよね。マネージャー兼、特別コーチって。」
いつものように答える。この答えしかないから。
「………………………………ふわ。」
「あ、跡部部長。一歩前に踏み出してください。」
「は?日吉どういう事―――――」
ぽすん。
「え。」
「跡部ナイスキャッチや。」
「ねむぅ…………すぅ………。」
眠くて眠くて前に倒れ込んだ。何故か黄色い悲鳴が聞こえる。
「っておい日吉どういう事だなんでチビはいきなり眠り始めたんだああ?というかなんで俺様がチビを受け止める役目なんだアーン?」
「無我の境地を使うとリョーマは疲れて眠るんです。後あなたが一番リョーマに近かったので受け止めてもらいました。」
「跡部部長落ち着いて……。」
「あー跡部ずるーい!越前さん俺がキャッチしたかったC!」
「跡っ部やるー!」
「ほらほら、ちゃんと抱き締めないと越前さん落ちちゃうよ?」
「テメェら後で練習増やしてやる!!」
「おい跡部!?それは職権乱用じゃ」
ぎゃーぎゃーと、回りの騒がしい声と悲鳴がまざって、遠くなってゆく。とりあえず今はこの腕の中の暖かさに身を任せた。
―――――――
とりあえず一つの区切りをここで!
次からは跡リョ色を濃くしていきたいです。
跡リョはまだまだならない気がしてなりませんがry
ここまで読んでくださった方ありがとうございました!
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