ラケット [ 13/18 ]
「――これ?何?」
そこには、ズタズタのラケットがあった。
六限目の授業も終わり、部活へ行く時間。
俺のラケットは何かに打ち付けられたような姿で、机の上に乗せてあった。ガットは切れ、埃を被っている。
「―――誰が、やったの?」
いつもは軽く受け流す。けど、これだけは。教室がしんとなるのを感じた。
「―――リョーマちゃん!!」
「リョーマ様!!!」
バタバタと廊下を走りながらやって来たのは桜乃と朋香。桜乃は心配そうに、朋香は怒りを隠そうともしてない。
「あっ、ラケット――!!!」
「リョーマ様!!大丈夫ですか!!??」
「大丈夫、ではないかも―――――それ、何?」
慌てる朋香に応えた後に見えた、二人の膝にある怪我。しょっちゅう転んでる桜乃はともかく、朋香はまず、転ばない。
「えっと、リョーマちゃん、これは――」
「桜乃、右手だして。」
「えっ―――。」
返事がくる前に右手を掴む。
「これ、誰にやられたの?」
そこにあるのは痛々しい痣。つい最近桜乃の練習を見た時にはなかった、真新しい痣。
「違うよ!これは、その――」
「桜乃!――3年の女テニの先輩です。」
3年。前に跡部部長のクラスに行った時の事を思い出す。多分、いや確実に今での嫌がらせも、このラケットも同じグループがやったのだろう。
俺一人だけなら構わない。けど、ラケット、何より友達を傷つけられて黙ってるほど腐ってるつもりはない。
「桜乃、朋香。ゴメン。」
「そんな!リョーマちゃんが謝る必要なんか――。」
「そうですよ!!!それにリョーマ様のせいじゃありませんから!」
「――――ありがと。……ねえ桜乃、ゴメンついでに一個だけ頼まれ事、いい?」
「?いいよ。何?」
「ちょっとだけ貸してほしいんだ、ラケット。」
―――――
桜乃ちゃん朋ちゃんも氷帝に。
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