荷物 [ 11/18 ]

俺を含め、クラス全体を呑み込んだ、そんな雰囲気。
目の前で意気揚々とデータの説明をしているこのチビ―――越前リョーマが。


「とまあ、一応レギュラーの分だけ置いとくんでざっと目に通してくださいっす。」
「あ、ああ。」

じゃあ失礼しました、といって戻ろうとするこいつに違和感を感じる。

「――――――なんで上履きが片方だけなんだ?」

よくみるとぶかぶかの上履きを片足だけはいてる。

「芥川先輩にかりたっす。」
「?なんでジローが…」
「―――――心当たりある人いるんじゃないっすかね?」

そう言いながらチラッと女子の方を見るこいつ。ざわめく女子たちに大体推測できた。
元々、男テニ女子マネージャーに対するいじめが酷かったので、特例で男テニ女子マネージャーが禁止になっていたのだ。そこに来たのがこいつ。いじめが起きてもおかしくない。
だが、

(ジローが上履きを貸したやつなんかいたか?)

あのジローが貸すくらいだ。そうとう気に入ったのだろうか、こいつを。


「じゃあ、失礼します。」
そういってまた大量の書類をもつ。
「おい、待て。」
「?、なんすか?」

思わず呼び止めてしまった。何を考えていたわけではなかったのだが。回りのざわめきがうるさい。

「おい、樺地。こいつの荷物を持ってやれ。」
「ウス。」
パチン、と指を鳴らすと何時ものように樺地が返事をする。
「かっ、樺地先輩……いつの間に現れたんすか…って、悪いっすよそんなの。大丈夫っす。」

そういってまた荷物を持つチビ。正直、チビな分荷物が重そうに見える。

「こっちの問題なんだよ。俺様が子供を苛めてるようにみえんだろーが、アーン?」
「っ!!!??子供ってなんすか!!?もういいっす樺地先輩気持ちだけ受け取ります失礼しました!!!!」

そう早口でいって、来たときよりも少しだけ低くなった書類の山を軽々と持ってずんずん歩いていった。

「本当に子供かよ………。」

あの図書室の時との違いに何となく溜め息をこぼす。

「あ、跡部部長。」
「アーン?」

扉近くまで行ってから、チビが振り返った。

「ありがとうございました。」
だって、この荷物の事気にしてくれたんすよね?

それだけ言って、チビは廊下をぱたぱたと走っていった。



「……くっそ。」
なんで前の時みたいに笑いやがる。




――――――

跡部様って下心の無い笑顔によわそうだよね!というイメージで。

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