図書室 [ 8/18 ]

うっすら緑かかった黒髪が風でふわふわ揺れている。揺れるたびに白いうなじがちらちら見え隠れする。これだけ見たらただの美少女なのだろう。

今いる図書室は新設ではなく、昔からある歴史物のようなもので、利用する生徒も教師もちらほらだ。今日は少し昔の本を探しに来たのだが、こいつが当番らしい。寝てるが。

「おい、起きろ。借り物だ。」
言っても起きない。カウンターにぺたりと張り付くように寝ている。今度は軽く揺すってみる。
「起きろ、チビ。」
「……だから、かるぴん、わかはたべものじゃないから……あたしいつも……いって…………る………」
「起きろ!」
「ふひゃ!いった!!誰……って、跡部、ぶちょ…?俺に何か用っすか……?」
頭をパチンと叩いたら起きた。眠そうだが。
「本、借りる。」
「………あ。わかりました……っす。」

貸し出しはパソコンを通すため、図書委員を通す必要がある。
渋々本を受けとるチビ。そこで気付く。

「お前、一人称『俺』じゃないだろ?」
「!!…………何でですか?」
「さっき寝ぼけていた時違かった。」
「………昔は、です。今は俺。」

立海にいた時か?と聞こうと思ったが、別に気にすることではないと思い黙った。
図室特有の静けさと空気。しん、とした空間。

(そういえば、女子とこんなに静かに居たことあったっけか。)

最近は学園のどこを歩いても騒がれる。別に嫌な訳ではない。が、やはり静かな時間も好きなわけで。

また眠くなってきたのか、心なしかふらふらと本の貸し出しを設定するチビ。一瞬手伝ってやろうかとも考えたが、その考えは一瞬で放棄した。

(なんで俺様が手伝う必要あるんだ?アーン?)

ただ、寝ぼけているのか良く分かってないのか(おそらく両方)中々準備できないのにいい加減イラついてきた。

「たっく……ここはこうするんだよ!」
思わずカウンター側に回り込み、チビのマウスを奪い取ってカチカチと操作する。チビはまだ寝ぼけ顔でぽかんとしている。

「跡部部長、できたんす…か…?」
「このくらい出来ない方がおかしいぜ。アーン?」
わざと、挑発してみる。

「す、ごい……ね。」

正直、生意気なセリフが降ってくると思ってた。だから、この言葉は予想外で。

「なら、これで、いい、の?」
「え、あ、ああ。」

ふにゃり、と笑いながら眠そうにたどたどしく喋る。勿論笑い顔をこんな至近距離でみるのは始めてだし、口調もいつもの生意気はどこかに捨ててしまったようなしゃべり方だ。
カウンターに回り込んでチビの操作していたパソコンを奪い取った、というわけでチビに近い場所にいるわけで、無駄に白い肌が見えたり、シャンプーの香りがするわけで。
女子には慣れているはずなのに、思わず固まってしまった。

「ん、できた。……跡部ぶちょ?」
「…………………」
「ぶちょ?本を」

チビが言い終わる前に本をつかんでこの空間から逃げ出した。
チビがポカーンとしているのは何と無くわかったが、振り向く気にもなれず、物凄い早歩きで歩く俺を見て驚いてる日吉と擦れ違ったことしか覚えてない。





いわゆるぎゃっぷもえ。
やっとからみはじめた←げきおそ

[*prev] [next#]
top
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -