守るべきもの(定沖)/真宮寺実琴(2)
「俺は、きっとお前が死にそうになってても主人がいたのなら助けられない。」
「こっちだってそうでぃ。お前なんか助けてるヒマあったら土方殺して副長に俺がならぁ。」
「それ何か違うぞ。」
言いたいことは分かっている。だから余計にはぐらかす。
言ってしまったら終わってしまいそうで。そもそもこの関係って何だっけ?
「だからだ、なぁ・・・俺が言いたいのは、だ。」
特に何もするでもなく、甘い会話をするでもなく、キスもしなければ手も繋がない。強いて言えるのはただ傍にいるのが心地いいだけ。
「最後に一緒にいるのはお前であればいいって、そーゆーこと。」
背に太陽を背負って、銀に輝いて。
強さに満ちあふれ、自身に照らされ。
何て単純明快、何て心地よい。
「 」
「ん?何だって?」
俯いた沖田は何か呟いたようだが、残念ながら定春の耳を持ってしても聞こえないほどの音量だったらしい。もう一度とねだるように耳を傾けるが、不適に笑った沖田はそれ以上はなしだと打ち切り、立ち上がった。
「そろそろ帰るぜぃ。万屋の旦那も待ってるだろーよ。」
「おう、そうすらぁ。んでさっき何て言ったんだ?」
「内緒でさぁ。」
「えー、何だよそれー。」
きっとまた次に会っても言わないだろう。次に約束をするために。
自分達に明確な約束などいらない。全て曖昧で、ごまかして。
そしていずれ忘れてしまうだろう。だけど、そのころにはきっと新たな理由が生まれているはずだから。
「んじゃな。また。」
「おう、また。」
夕日も沈み出すあかね色の空の元。二つのでこぼこな影が正反対の方向へと歩みを進める。
ー俺も、そうであったらいいと思うぜぃー
沖田は、満足そうに、真っ赤に染まっていく夕焼けに微笑みを向けた。
終わり
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