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 マネージャーの仕事について書かれたプリントが配られた。主な仕事はドリンク作り、洗濯、怪我の手当て、ボール拾い、備品や用具の点検、スコアの記録とか。
 今までこの仕事はどうしてたんだろう。平部員が自分たちの練習の合間にやってたのかな。自分たちだって練習したかっただろうに。
 まあ、何はともあれレギュラーと関わりそうな仕事は先輩方がするだろうから、一年はボール拾いとか洗濯、備品の点検とかかな。
 ドリンクも作るまでは一年だろう。渡すのは先輩方で戦争になりそうな予感。うわあ、想像に難くない。
 仕事的に多くはないけど、マネージャー候補は15人もいるのだ。私の仕事まではない気がする。
 正直こんな大人数がコート内をうろうろしてたら練習の邪魔だろうけど、私的には万々歳だ。
「それじゃあ、解散」
 部長さんの一言でそれぞれのメニューをこなそうと各自ばらばらと動き出した。私たちも仕事をしないと。
 何をしようかと友達Bを見ると、彼女はぽわっと頬を染めて仁王先輩を見つめていた。そうだった、友達Bは仁王先輩に首ったけだった。ちなみに友達Aは幸村先輩だ。
 周りを見渡すと、他の一年も先輩方もみんなそれぞれ思いを寄せるレギュラーを目で追いながら手を取り合ってきゃいきゃいと騒いでいる。おいみんな仕事しろ。
「はあ、」
 同じ一年ならまだ仕事しようよと言いやすいけど、先輩方には言える気がしない。だって恋する乙女こわい。どうしよう。
「たるんどる!」
 急に聞こえた大声に、コートが一瞬で静まりかえった。声のほうを見ると、黒髪でくせ毛の先輩が真田先輩に怒鳴られていた。部活始まってそうそう何をしたんだ。ストレッチをしていたはずなのに。
 真田先輩の大声をきっかけに、気の強そうな美人の先輩が私達に指示を始めた。比較的楽な仕事はやはり先輩方がするらしい。理不尽。
 一人ひとりにてきぱきと指示を出して、以上よ、と満足げに指示を終えた先輩。あれ、私なにも言われてない。
「あの、私はどうすれば?」
「あなたは、……適当に自分で見つけなさいよ」
 なんて投げやりなんだ。自分で見つけるのが一番大変じゃないか。どうしよう。ぐるりとコートを見渡す。
 草むしりでもしようかな。見苦しいほどではないけど、コートの端には雑草が生えているのが見て取れる。審判台の足元なんかは青々としている。
 まずは平部員のコートから始めよう。奥にあるコートがそうだと言っていた。
 練習中のボールにびくびくしながら、左端のコートに進んだ。しゃがみ込んで、適当に手近な草を素手でぶちぶちとむしっていく。なかなか根っこから抜けない。用具入れにスコップとかないかな。探して来よう。
 用具入れの片付けをしていた同じ一年の子に聞いて、持ち手の赤いスコップとついでに草を運ぶようのバケツを借りた。
 スコップのおかげでさくさくと作業が進む。気が付けばコートを一周し終わっていた。
 あちこちでそのままにしていた抜いた草のかたまりを集めて、バケツに入れる。結構重たい。
 バケツを持ち上げると、次のコートに向かった。さすが王者立海と言うだけあって、コートはまだまだあるのだ。頑張ろう。

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