豪吹





しん、と静まり帰った一室。
イナズマジャパン代表の強化合宿で選手一人一人に用意された豪炎寺修也の個室には部屋の主である豪炎寺ともうひとり、吹雪が部屋に備え付けられたベッドに少し間隔を空け隣り合わせで腰をかけていた。

「…」

チラリと吹雪は左隣の豪炎寺の様子を見た。しかし彼は吹雪のことを気にした様子もなく雑誌にその黒曜石のような漆黒の瞳を向けている。

はぁ、と吹雪はため息を一つ吐くと自らも持っていた文庫本に視線を戻した。

けれども豪炎寺の様子が気になる吹雪の脳に本の内容は入ってこない。



別に無言が苦痛なわけじゃないけれど折角ふたりきりなんだからこうして2人で別々なことをするんじゃなくお話したり、何か…何かふたりの時間を過ごしたいな。と吹雪が再び豪炎寺の様子をちらりと伺うと、


パチリ



ふたりの目があった。


突然のことにあたふたと何を言おうかと慌てる吹雪に対し、

「どうかしたのか?」

豪炎寺はあくまで冷静に言葉を返す。
あんまりにも動じない豪炎寺の様子に吹雪は、


(僕といても楽しくないのかも。)

とネガティブな方に思考が傾く。


「う…ん…、集中して雑誌読んでるみたいだったから、そんなにそれ面白いのかなってね」

心中とは違う言葉を紡ぎ微笑んだつもりだった。




ふわり、


「えっ、え?」

驚きに声を上げる吹雪は豪炎寺の胸の中。
眉尻を下げ、悲しそうな表情をする吹雪にたまらず、豪炎寺は持っていた雑誌を放り出し包み込むように抱きしめていた。



「そんな顔はするな。」


の言葉なんてひとつもなかった


(ありがとう。キミがこうしてくれるだけで僕は安心出来る。)

(俺に遠慮なんて必要ないぞ。)

(じゃあ、豪炎寺くんからもっと僕にかまって)








――――――――
豪炎寺さんはポーカーフェイスが上手いだけで、実はそんな余裕ない。
あと豪炎寺さんは言葉より行動で示すタイプだと思います。スパルタシュートしかり。
なので愛の言葉はあまり口にしないけど行動では示してくれるよ。







(C)確かに恋だった
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