short | ナノ

「肌、焼けたァ?」
「少しね、」
「そっかァ」



一生懸命日焼け止めを塗る女の子のことを、どこか疎ましそうに見る男の子の視線が私はとてつもなく嫌いだ。女子ってそればっか、とか、これだから女子は、とか。あとはそうだなあ、ブスのくせに日焼け止めなんか塗ってやがるなんて声も聞いたことがあるけど、それを言っていた奴らも芋くさい男の子達だった。腰パンもそのつんつんした髪の毛も、妙にほっそい眉毛も、全部全部ださいよ。日焼け止めを塗る姿や暑いのに長袖を着ている姿を見苦しいとか言うくせに、「色白な子が好き」だなんて馬鹿か。女の子たちの努力を微塵も知らない男の子は嫌いだ。

「これでも日焼け対策してるんだけど」
「そ?女の子は一生懸命だよネ」

くすくす何が面白いのか笑う荒北の肌は、私よりとても白い。こいつが一生懸命日焼け対策をしている姿なんか想像できないから、きっと体質なんだろう。白いというよりもはやそれは青白く、病人かと見まがうほどの肌の色だった。正直私はそれが羨ましい。

「荒北はいいね、真っ白だから」
「んー、日に当たったらすぐ赤くなっちゃうヨ、これはこれで大変」

ひりひりすんだよネ、って笑うその表情はどこか冷ややかだ。焼けたと言われた自分の腕をまじまじと見つめて、確かに若干小麦色になったと思う。今年は定価3000円の日焼け止めに、百貨店で売っている美白化粧水を使っているというのに。やっぱり体質が一番関係してるんだろうか、そんなのひどい。

「気にしてンのォ?」
「まぁ、」
「でもさァ」

ぱし、腕を荒北の細くて白い手に掴まれた。指なんか本当に細くって、まるで骨みたい。とても冷たい手だった。外はこんなにも暑いというのに。掴む手の力は意外にも強くて驚いた。長い睫毛をはためかせながら、ぱちぱちとまばたきをするその仕草は魅力的で、でもどこか私をいらつかせた。

「何」
「俺は好きだヨ、なんかそそる」
「……変態」

本気か冗談か分からない、冷ややかな表情で彼は笑った。ぱち、ぱちとまた、まばたき。燦々と照る太陽が憎らしい。私の鞄の中には3000円の日焼け止めが入っている。帰り、教室を出る前に塗ろうと思っていたけれど、今日は止めておこうか。いや、もうずっと塗らなくていいかなあ。荒北に掴まれた手がじんじんと熱くなってきた気がした。冷たい手のくせに。その手と細い目が私をとらえて放さない。気温のせいか、それとも私の気持ちのせいか。暑くって頭も沸いちゃってる。

「荒北、」
「なァに」
「彼女いたよね」
「いるヨ、すっごく色白な子」


20150602
title by 星食
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -