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不自然に赤いウインナーを掴み、口へと放った。まずくないけど別に美味しくない。ああ、コンビニ弁当って感じ。中学生の頃、こういう食品添加物のたくさん入ったものはできるだけ買わないようにしましょう、みたいなことを習った気がする。



誰もいない屋上は居心地がいい。…というか屋上は立ち入り禁止。何故私が入れたかというと、針金で鍵を軽くいじったら開いてしまって。それからここに来るのが癖になってしまった。まあ月に二、三回程度。

誰も来ないと分かっているから、サボりにも絶好の場所だし、何より青春っぽい。友達には言おう言おうと思ってたんだけど、面倒になって結局言っていない。俗に言う、秘密の場所ってわけでそれもまたいいかなって思う。なんとなく今日は感傷的で、ここに来てみた。いつもはクラスで友達と食べる昼食だけど、具合悪いからと断って来た。もちろん一人で。

コンビニ弁当のエビフライってほぼ衣じゃん、せっけーなあ…、何だこの意味不明なおかず、とか選んでおいてなんだけどケチばかりつけたくなった。

入学して数ヶ月経ったけど、特に楽しいこともなく過ごしてきた。確かに文化祭、とか放課後にカラオケ、とかしてそれなりな生活はしてるんだけど。刺激が、どうも足りない。危ないこととかはしたくないし興味もない。じゃあ何がしたいのって聞かれても…困る。とりあえず時間をもて余しているのが嫌だった。

ゴロン、と弁当を少し残したまま仰向けになった。おー、雲ひとつない、快晴。平和だなあ〜と感じながら目を閉じた。ひんやりしたコンクリートの床が気持ちいい。寝そう。



「あ、れ…」

目が、覚めた。つまり寝てしまっていた。やばい、授業に遅れる。慌てて腕時計を見るとまだ10分休みがあった。ほっとしたのもつかの間、目の前を見て夢か、と思った。

「あ、おはよう」

爽やかな発声の後、にこりと笑う。そこには知らない男子が一人座っていた。ここでは今まで誰とも会ったことがなかった。だから今目の前にある状況が不自然だ、そんなことを思って目を何度かこする。うん、夢ではない。

「ねえ、コンビニ弁当って体に悪いよ」

は…初対面であるにも関わらず彼は人の昼食にケチをつけてきた。いや、でもなかなかこの人、かっこいい。どこのどいつだ。

「知ってる」
「いつもいるの?ここ」
「…たまに」

まだ少し眠くて、うまく彼の言葉が耳に入らない。確かに鍵はしていなかったけど屋上に続く階段からもう立ち入り禁止のはず。どうして来たんだろうか。

「俺こないだ屋上に続く階段を駆け上がる女の子見て、来てみようって思ったんだけど、あれって君?」

こっちの考えも知らず話し出した彼。いつも周りに誰もいないこと確認してるんだけどなー、見られてたとは。しかしえーっと、こないだ…?いつだっけ、…あ。そういえば、

「泣いてた…」
「あ、じゃあ君だ」

人気の恋愛小説を読み終えて、なんだか無性に泣きたくなったのはわりと最近だ。安っぽい話だなんて思っていたのに私としたことが泣けてしまったんだった。そしてここに来て素敵な恋をしよう、だとか考えてみた、ような。まさかそんな痛々しい涙を他人が見ていたとは。理由は言わないでおこう。

「なんか話してみたくなったから。」
「…へえ」
「君、一年でしょ?」
「え、うん、あんたもでしょ…っえ、まさか」
「バスケ部二年、神です。名前何て言うの?」

うわ、まさか先輩だったとは。普通にタメ口利いてた。軽い自己紹介みたいなものをしてくれたから、あたしも慌てて名乗った。タメ口に関しては別に気にしてない感じだった。じん、なんて珍しいな。

「じんってどう書くんですか、仁愛の仁?それとも、」

そこから口が止まる。あれ、じんって他に何があるっけ意外と頭に浮かばない。えーっと。

「かみさま、の神だよ」

そう言って、またにこりと"じん先輩"は笑った。かみさま、だなんて。似合いすぎて思わずかみさまって呼びそうだった。

20110923
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