short | ナノ

「ブスのくせに何が痴漢されたーだよしね」
「…荒れてンねなまえチャン」

なんとなく開いたツイッター。学校の友達や芸能人の呟き、豆知識系のbotがつらつらと並ぶ。

「絶対それ勘違いだし思い上がりもいい加減にしろって思わない?私なら絶対恥ずかしくてそんなこと言えない」

「そういうもんかァ?ホントにされてたら女は相当落ち込むって聞いたけど?」
「バスケ部マネ。背低い方」
「あぁ…」
「ほらぁ!靖友だってそういう反応する!」
「バッ、ちげーよ!俺はお前よりかは性格悪くねぇし!!」
「へーそーですか」

痴漢された最悪、などと誰でも見られるオンラインに呟くあの子へと、何かリプライを送ろうとしたけれど面白いものが浮かばなくてやめた。彼女の友人たちが大丈夫?何もなかった?だなんて言葉をかけているのを見て笑ってしまう。腹の中では何を思っているのやら。


「ツイッター楽しい?」
「靖友だってやってるじゃん。全然呟いてないけど」
「別にわざわざ書くことねーしよ」

そんなことを言っているくせに右手にはスマホ。つまんないゲームでもしてるんでしょ。それかあれか、やらしいサイトでも覗いてるのかな?

「彼女といるのにスマホはよくないと思いますー」
「おめェだってツイッタしてたじゃネェか」
「もうやめたもん」
「ハッ」

乱暴に携帯を制服のポケットにしまう靖友。何してたんだろ、別に聞きはしないけれど。珍しく部活がお休みだから私と会ってくれるとは言っても、どこに行くわけでもなく教室でだらだらと話すだけ。たまには外に出てカフェに行ったりもするけれど、面倒だしお金もないしで、結局学校だったり寮だったりがデート場所の定番。

「靖友、何か飲みたくない?」
「べプシとか?」
「このど寒いのに炭酸とか飲むかボケ」
「なまえチャン口悪くなったよネェ」
「誰のせいだろーねー」

行こうよって椅子に座ったまま動かない靖友の腕をくいくいと引く。部活に行こうって、新開くんや福富くんが放課後声をかけてくるときは素早く動いてるのに。私より部活が大切なのはよーく分かります。別にそれでわたしは構わないし靖友に好きなことを頑張って欲しいから。面倒な女子にはなりたくない。

「コンポタ飲みたい」
「喉乾いてンじゃネェの?」
「コンポタで潤す」
「うわ、気持ちわりィ」
「年中ベプシの靖友もキモいけどねっ」
「ア?」

そう言って煽れば、ちょっぴり怒った靖友が席を立つ。嫌々ながら本当は優しいの、知ってるよ。そういうところがすごく好きなんだし、誰にもあげたくないなって思う。靖友の優しいところなんて、他の女の子に知ってもらわなくていい。…なんて面倒なこと、絶対絶対彼には言わないけど。どこのメンヘラだって話。

「自販機遠くね?」
「自転車で行ってきて」
「アホか」

さびーと言いながら廊下に出て、購買の前にある自販機を目指す。手をちらりと見るとズボンのポケットの中で、少し残念だった。

「手ー、繋ぎたいなあ」
「…学校だからダァメ」
「ちぇー」

靖友は恥ずかしがり屋だなあってつくづく思う。告白してくれたのは靖友だけど、人前でいちゃいちゃしたり、好きとかそういうことを言ったりもあまりしない。私も面倒なべたべたしたことは好きじゃないから、そんなに気にはならないんだけど、冬だからほら、人肌が恋しくなるというか、ね。

「学校じゃなかったら?」
「…イーヨ」
「!」

こういうところがとびきり好きです。


20141223
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