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小さな物音で目を覚ました。時計の針を見ると午前三時を指している。カーテンから明かりは漏れてこない。

「悪い、起こしたか」
「あ、」

そっか、私は昨日こいつと寝たんだった。いつもは一人で目が覚める部屋。今はそうではなかった。大きな手でくしゃっと髪を撫でる新開。気持ちが良い。目を細めてまるで眩しいとでも言うようにして私を見る。

「なまえ」
「なにー…」
「はは、眠そうだな」
「んー…」

だって新開が起こしたんじゃん、そう言ったらそっか、そうだな、だって。人が気持ち良く寝ていたのを起こしておいて、そうしてそんなに楽しそうなんだろう。こんな真夜中、頭はうまく回らない。だけど目は暗闇に慣れ始めていた。そんな中新開はというと、起き上がって何かを飲んでいた。

「何それ」
「水」
「お酒飲みたいなー」
「駄目だ明日早いんだろ」

なんだつまんない。お酒だったら付き合ってもよかったのに。…いや、やっぱり付き合わないかな。明日は単位の危ない授業が一限だから、遅刻するのはまずい。

「ねえ、私も喉乾いた。寝てたし、喋ったし…それにほら新開激しかった、じゃない?」

語尾でそんなことをからかうように、ニヤリと言って奴の反応を暗闇の中で探る。いつも私が彼のいいようにあしらわれているから、お返し。今はまだ若干アルコールが残っているのか強気でいられたし、頭はぼんやりしていて羞恥心もそんなになかった。おーい新開くん。


「これ飲めよ」
「わあスルーとか」
「はは、なんだよ」
「新開、飲ませてよ」
「ごめん俺も眠たいんだ」
「へえ」
「…」

新開はクッと一口水を含んだかと思えば、即座に私の両腕を押さえつけて、それを飲ませてくれた。…ねえこれって、ヒュウって感じじゃない?いや、そうしてくれるのを私も待っていたのかもしれない。自分から誘っておいてなんだけど、どきどきした。挑発に簡単にのるんだね、自転車に乗っている時とはまた違った新開のこういう所が好き。喉から体全体に水分が行き渡るのが分かった。気持ちがいい、私どれだけ乾いていたんだろう。潤うって素敵だね新開。レース中ってどれくらい喉が渇くのかなって、ふいに思った。別に今それを聞こうとは思わないけれど。だってそれって野暮にもほどがあるじゃない?水、おいしい。

「私今、生きてるなあ」
「それどこかで聞いたな」
「あはは」

それからじっと見つめあって、何を思ったのか新開は私にまたがる。なあに、そういう気分になっちゃったのかな。明日一限あるって私言ったよね。新開自分が二限からだからって、この野郎。


「水、生ぬるかったよ」
「黙ってろ」

今度は空気を飲ませてくれた。


20141129
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