硝子の夜の鎮魂歌 B2/10
「あ、あの、バイオレット・・・」
『・・・・・・・・・』
恐る恐る話しかける彼女の声が聞こえる。意識は今描いている線に、ただ聴覚だけを彼女の声に。
風に揺れる髪の一本一本までも目で追うのはボクの癖。
つい目付きがキツくなってしまったのか、感づく彼女の表情がさらに強ばる。
「・・・何でもないわ」
感覚を取り戻すどころか、不調のボクの手はすこし集中力が切れただけで現実にない線を描こうとしてしまう。
『・・・はぁ』
・・・せっかく彼女が頑張ってくれているのに、ボクが描けないんじゃあ全て台無しだ。
手にこもる熱が冷めていき、思わず嘆息が漏れる。
「・・・怒ってる?」
『ううん』
「バイオレット・・・少し疲れちゃった」
『・・・休もうか』
素直に伸びをする彼女の姿を見てボクははっと息を飲んだ。
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